追悼チャドウィック・ボーズマン、キングよ永遠なれ

2018年にロンドンで行われた『ブラックパンサー』の欧州プレミアで撮影されたチャドウィック・ボーズマン。(Photo by Gareth Cattermole/Getty Images for Disney)


『ブラックパンサー』の公開当初、試写会で熱狂する人々や映画の公開をいまかいまかと待ち望んでいた人々にサプライズを仕掛けるボーズマンの動画はネット上に広まり、こうした動画を見ずにSNSをチェックするのは不可能だった。同作屈指のアンバサダーとなったことで、彼自身も伝説的な人物とみなされるようになった。もちろんボーズマンは、このキャラクターが人々にとって何を意味し、ティ・チャラ王の物語がそれにふさわしく壮大なものとして描かれたことの重要性を十分に理解していた。いまでこそ私たちは、ボーズマンが『ブラックパンサー』という革新的な映画とポスト・ブラックパンサーのアベンジャーズ作品に携わり、レッドカーペットの上を歩き、手術の治療の合間を縫って公共の場に姿を見せていたあいだもずっとがんと闘っていた(2016年にがんと診断)ことを知り、彼のさらなる偉大さを痛感しているのだ。

数ある“ドッキリ企画”のなかでも筆者のお気に入りは、ジミー・ファロンが司会を務めるトーク番組『ザ・トゥナイト・ショー・スターリング・ジミー・ファロン』の場面だ。番組のなかでは、『ブラックパンサー』のポスターの前でファンたちが映画に感動した理由を語るかたわら、カーテンの後ろにファロンとボーズマンが隠れている。そこでボーズマンが登場し、ファンたちは予想通り、我を忘れて熱狂するのだ。動画のある場面では、母親が息子のとなりで、息子にはバラク・オバマやブラックパンサーといった尊敬できる存在がいるのは幸せだと語り、そこにボーズマンが登場して母親をハグする。そのときの少年は、驚きで絶句状態だ。大好きなヒーローが目の前にいるなんて信じられないと言わんばかりに、かすかに微笑んでいる。2018年当時、この動画を観るとどうしても目頭が熱くなった。いまでは、涙なしに観るのは不可能だ。



ボーズマンには俳優としての限りない可能性があり、私たちはまだまだ彼の演技を観ていたかった。ティ・チャラ王(『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のクライマックスで姿を消したティ・チャラが『アベンジャーズ/エンドゲーム』の壮大なバトルの前に再登場したときの観客の熱狂ぶりを思い出してほしい)のその後も観たいし、スパイク・リー監督の最新作『ザ・ファイブ・ブラッズ』(2020)で黒人のベトナム帰還兵たちにインスピレーションを与えた故“ストーミン”・ノーマン隊長のような役をもっとたくさん演じてほしかった。数カ月後に公開を控えた、ジョージ・C・ウルフが手がけた米劇作家オーガスト・ウィルソンの戯曲『Ma Rainey’s Black Bottom』の同名の実写版映画で、ボーズマンはレヴィー役を演じている。戯曲を読んだことがある人はご存知のとおり、これはなかなかの役どころである。それに、愚か者、工場労働者、ヒーロー、悪役、弁護士、医師、兵士、芸術家、活動家、犯罪者、大統領の役をもっともっと演じてほしかった。ボーズマンは見事なレガシーを私たちに遺してくれたが、彼の不在によってその偉業はまだ未完成のように感じられる。たしかに映画は残るが、それだけでは足りない気がしてしまうのだ。だが、作品こそがボーズマンのレガシーなのだ。キングは死んだが、その功績は永遠だ。


Translated by Shoko Natori

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