追悼チャドウィック・ボーズマン、キングよ永遠なれ

2018年にロンドンで行われた『ブラックパンサー』の欧州プレミアで撮影されたチャドウィック・ボーズマン。(Photo by Gareth Cattermole/Getty Images for Disney)


アフリカの超文明国家ワカンダのティ・チャラ王を演じる前から、ボーズマンには実在のヒーロー役の演技経験があり、2017年の映画『マーシャル 法廷を変えた男』では、全米黒人地位向上協会の弁護士サーグッド・マーシャルのような著名人を演じていた。それでも、ボーズマンはヴィブラニウム製の戦闘スーツをまとった戦士としてもっとも強く人々の記憶に残るだろう。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016)でワカンダ国の国王だった父親を失い、国を任されることになった王子を演じた瞬間から、私たちは特別な何かが生まれる瞬間を目の当たりにしているという感覚を抱いた。悪役やのちに味方となる相手と闘うボーズマンの分身の登場とともに、ブラックパンサーというキャラクターが拡大を止めないマーベル・シネティック・ユニバースのヒーローたちに匹敵する存在であることに瞬時に気づかされるのだ。素晴らしいカメオ出演でありながら、まだ名脇役とは言えないものの、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のすべての出演シーンでボーズマンは魅力を最大限に発揮している。彼のすべての行動は、同作の外ではより壮大で興味深い物語が展開されていることを終始ほのめかし、観終わる頃にはブラックパンサーが主役の作品が楽しみで仕方なくなる。ボーズマンは訓練を通じてアフリカの戦闘スタイル(ボクシングのようなダンベ、棒を使うズールー、カポエイラ・アンゴラなど)を身につけ、アフリカの多種多様な文化を学び、リサーチのために現地を訪れ、キャラクターにふさわしいアクセントを取得するために努力を惜しまなかった。2018年の映画『ブラックパンサー』の監督と脚本の共同執筆を手がけたライアン・クーグラー同様、ボーズマンは研究と役作りに多くの時間を費やした。MCU作品であるかどうかにかかわらず、ボーズマンは単独のキャラクターを描いた映画が一部の人々のあいだではリスキーだと思われていたことを承知していた。だが、結果的に『ブラックパンサー』は世界的ヒット作となった。

『ブラックパンサー』の成功においてどれほどボーズマンの演技が重要だったかをセンセーショナルに述べるのが難しいのと同様に、アカデミー賞にノミネートされた同作に対するボーズマンのリアクションがいかにドラマチックだったかを見過ごすことも困難だ。クーグラー監督は、近未来的なアフリカ国家というユニークで壮大なビジョンを私たちに与え、ボーズマンは主人公にふさわしいロイヤル・ヒーローというひとりの人間を演じた。主人公の妹シュリ役を演じたレティーシャ・ライトとの信頼関係はもとより、マイケル・B・モンガー扮するキルモンガーとのにらみ合いは見事だ。ボーズマンのキャラクターには、国を守るという責任感と、新国王にふさわしくないかもしれないという不安に揺らぐ心、ユーモア、哀愁、疑い、シェークスピアばりの厳粛さが埋め込まれている。ボーズマンが演じるティ・チャラ王は、俳優の見事な演技のおかげで神秘的であると同時に、必要なときは人間らしい一面を見せる。『ブラックパンサー』は、ルピタ・ニョンゴ、ダニエル・カルーヤ、ウィンストン・デューク、フォレスト・ウィテカー、アンジェラ・バセット、ダナイ・グリラといった夢のようなキャストが織りなすアンサンブル作品であるのはたしかだが、そのなかでも主役のボーズマンの演技は一際輝いており、誰が主役かは一目瞭然だ。それだけでなくボーズマンのブラックパンサーは、彼がキャラクターにもたらした尊厳を見抜いた世界中のオーディエンスや、自分たちとまったく同じ外見の漫画のヒーローの姿を見た世界中の子どもたちに多大なるインパクトを与えたことは言うまでもない。「ワカンダよ、永遠なれ!」は、架空の国における闘いの雄叫びにとどまらず、映画館の外の世界でもスローガンとして叫ばれた。

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Translated by Shoko Natori

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