音楽がもたらす享楽とは何か? 鳥居真道がJBに感じる「ブロウ・ユア・マインド感覚」

『Live At Home With His Bad Self』の中でも白眉はなんと言ってもラストを飾る「Mother Popcorn」です。「Cold Sweat」のアイデアを発展させてより凶悪(Badass的な意味で)にした曲で、個人的にはJBの曲でも5本指に入ります。シングル版のBPMは115前後ですが、ライブ版は133前後なので相当速い。ちなみに同じ音源の『Sex Machine』版は125ぐらいです。バンドの演奏もJBのパフォーマンスも神がかり的です。特にクライド・スタブルフィールドのドラムの凄まじさたるや、と言いたいところですが、ドラム・ソロ的なものがあった後に、JBが「メルヴィン・パーカー!」と言っている気がしてならない……。クレジットにはスタブルフィールド、パーカーに加えてジョン・"ジャボ"・スタークスの名前があります。この時期のJBの画像を検索するとドラムセットが3つ並んだものが出てきます。JBがドラムを複数人雇うのは、あるときドラマーがやめると言い出して困った経験を踏まえて、常に控えを確保しておきたいという理由があるそうです。



話を戻します。このドラムはどう考えてもクライド・スタブルフィールドでしょ! と言ってしまいたいところです。けれどもエビデンスがないので言い切れない。いやいや、そんな細かい話はどうでも良いんだよ! という話もあります。

「Mother Popcorn」の途中、JBが「ときどき孤独を感じる」と嘆いた後に、「別のブラザーを呼べ」と言い、サックス奏者のメイシオ・パーカーを呼び込みます。ここから実際にメイシオにソロを取らせるまでのJBが凄まじさと言ったらない。トランス状態とでも言うべきでしょうか。ただひたすらメイシオを煽っているだけなのですが、スポーツ選手がよくいう「ゾーンに入る」とはこのことではないかと思うほどの没入具合。ここでいう没入とはバンドの演奏との一体となることと言って良いかも知れません。とにかく切れ味が半端ではない。

こうした神がかり的なパフォーマンスに身を委ねているとき、細かい話はどうでも良くなります。垂直方向に突き抜ける感覚がもたらされ、我々はそこに超越的なものを見るわけです。ここで何か言葉を発するとしたら、もはや「おおおお!」と言う他ない。

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