課金制プラットフォームで2億円を稼いだセレブ、古参の性労働者が大激怒の理由

2019年、ファッションアウォードでのベラ・ソーン(Photo by k Aldama/picture-alliance/dpa/AP)

2016年のサービス開始以来、セックスワーカーたちに愛用されてきたサブスクリプション型ソーシャルメディアプラットフォーム「OnlyFans」。クリエイターたちがファンに直接コンテンツを販売できるとあって、2020年3月の新規会員登録数は前月比で75%も増加した。

カーディ・Bやブラック・チャイナといったメインストリームのセレブリティの参入に加え、ビヨンセが「Savage」リミックスの中で触れたこともOnlyFansの人気に火をつけ、OnlyFansでアカウントを立ち上げて手っ取り早く稼ぐのが一種のトレンドになるほどだ。

そして今、OnlyFansの人気はさらに拍車がかかることになりそうだ。クリエイターとしては初めて、女優兼シンガーのベラ・ソーンがたった1日で100万ドル(約1億円)を売り上げたのだ。ソーンは限定コンテンツを1カ月20ドルで販売し、1週間足らずで200万ドルを稼いだ。

ソーンの思わぬ大成功のニュースは全米で話題になった。ソーシャルメディアでは大勢の人々が、彼女のコンテンツ見たさにOnlyFansに登録したとジョークを飛ばした。OnlyFansにとっても間違いなく格好の宣伝材料になった。ただし、ソーンの偉業を面白く思わない集団がいた。長年OnlyFansを愛用し、プラットフォームのメインストリーム化を複雑な気持ちで見守ってきたセックスワーカーたちだ。

公正を期すために言うと、ソーンは昨年アダルトサイト「Pornhub」向けにNSFW(職場での閲覧注意)映像作品を監督し、すでにアダルト業界は経験済みだ(彼女の代理人にコメント取材を依頼したが、返答はなかった)。セックスワーカーたちをいら立たせているのは、OnlyFansを始めたのはショーン・ベイカー監督(数々の賞を受賞した2015年の映画『タンジェリン』の監督)の次回作の役作りのためだった、というロサンゼルスタイムス紙のソーンの発言だ。「彼女が得る視点は、大半のOnlyFansのコンテンツクリエイターの経験とは似ても似つかないでしょうね」と、セックスワーカーのEllamourneは言う。「彼女もきっと、私たちと同じ問題に直面するとことになるでしょうね――プライバシーに立ち入ってくるファンとか、詐欺とか。でも結局彼女はセレブだから、特権を行使するのよ。売春の非犯罪化に向けた対話を後押しする気がないなら、がっかりだわね」

ソーンの成功に対する称賛の声が、とくに気に障ったセックスワーカーもいる。ラッパーのRubi Roseをはじめとする有色人種のセレブリティがOnlyFansに参入した際はさんざん叩かれたからだ。「(Roseが参入した時は)みんな『イカサマ』と大騒ぎしたでしょ」と、OnlyFansのコンテンツクリエイターSavannah Soloは言う。「でもベラ・ソーンは『役作り』のために参入して、とんだ大儲けしてるのよ」。ソーンや他のセレブがOnlyFansで大儲けしたことが報道されれば、OnlyFansで知名度を上げるのは簡単だと勘違いされるてしまう、とセックスワーカーらは懸念している。だが実際はほとんどの場合、骨の折れる地道な作業だ。「みんな手早く稼げるとかなんとか思ってるけど、実際は違うの」と、セックスワーカーのAllie Eve Knoxも言う。「常にコミュニケーションして、常にオリジナルコンテンツを制作して、常に『最先端』でなくちゃいけないの」

Translated by Akiko Kato

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