1960年代のエルヴィスは、どう映画の世界から音楽に回帰していったのか



FM COCOLO「J-POP LEGEND FORUM」番外編"全てはエルヴィスから始まった"Part4。今年が亡後45回忌、エルヴィス・プレスリーの軌跡を辿っています。今流れているのは、番組の後テーマ曲、竹内まりやさんの「静かな伝説(レジェンド)」です。どんな音楽もそうなんでしょうし、エルヴィスに限ったことではないのでしょうが、自分が思春期の頃に聴いていた音楽を聴くと、当時の景色とか生活風景、友人たちが鮮明に浮かんでくるもんですね。学校の廊下で、あの曲を皆でほうきを持って真似したなとか。そういう光景が頭の中に蘇ってきております。エルヴィスの1960年代はやはり賛否が分かれますね。映画で新しいジャンルを開拓していった、音楽と映画のメディアミックスを見せてくれたという功績はあるのでしょうが。でも、どんどんマンネリになっていったのは否めなかった。何よりコンサートがなかった。コンサート自体、現在のようにちゃんとしたPAシステムもないし、環境も良くなかったんでしょうけども、エルヴィスは1960年代にコンサートをしませんでした。1961年3月25日にハワイの戦艦アリゾナ記念館、今はワイキキにありますが、あれを建設するためのチャリティーコンサートがありました。それを最後に、以降の7年間コンサートがなかったんです。人前では歌わず、映画の中でしか歌ってこなかったんですね。そして、先ほどお話したテレビスペシャルで歌った。お客さんはさぞ興奮したでしょう、改めてそう思っております。ビートルズはコンサートツアーに幻滅してスタジオに籠るようになりました。エルヴィスが映画の中に閉じ込められて、満を辞してコンサートに帰ってきた。そんな1960年代の終わりだったんだなあ、と思います。と言いつつも、この頃の映画って今観ると他愛無くて愛おしさを感じる部分もあるんです。それがファンというものなのかな、とも改めて思います。来週は1970年代のエルヴィス・プレスリーです。



<INFORMATION>

田家秀樹
1946年、千葉県船橋市生まれ。中央大法学部政治学科卒。1969年、タウン誌のはしりとなった「新宿プレイマップ」創刊編集者を皮切りに、「セイ!ヤング」などの放送作家、若者雑誌編集長を経て音楽評論家、ノンフィクション作家、放送作家、音楽番組パーソリナリテイとして活躍中。
https://takehideki.jimdo.com
https://takehideki.exblog.jp

Rolling Stone Japan 編集部

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