1960年代のエルヴィスは、どう映画の世界から音楽に回帰していったのか




1966年に発売になったシングル『ジェリコの戦い』、ゴスペルのスタンダードですね。そして1965年のシングル『涙のチャペル』。この曲は浜田省吾さんが好きだって言っていました。共に、1960年にレコーディングされたものなんですね。それが1965年と1966年にシングルとして発売されて、『涙のチャペル』は3位になりました。やはり音楽ファンはこういう曲を待っていたんだろうなと改めて思っております。こういうスピリチュアルな面は、映画の中ではなかなか見せませんでしたからね。そういうストーリーの映画がほとんどなかった。歌が上手くて喧嘩に強い好青年、最初は経済的に恵まれていないけども音楽が好きで歌が上手いということで成功を手にしていく。そして、恋人とも結ばれる。そういうストーリーが毎回繰り返されていたんですね。そして、1964年、1965年になっていくと、時代はベトナム戦争です。世の中の若い人たちの中でも、感受性が強くて社会的関心があって、物事を真剣に考える人たち、きっと僕もその中に入っていたのかもしれませんが。そういう人たちが、エルヴィスはこのままでいいのかな? と思い始めていったんだと思います。これがさっき悪名高いとお話しました、トム・パーカー大佐の時代観のズレということになると思うんですね。トム・パーカーさんはエルヴィスをショー・ビジネスに売り飛ばした。そしてスクリーンの中に閉じ込めたと、今だったらハッキリ言い切ってしまえますね。ビートルズは1964年にアメリカツアーをやりました。この時にブライアン・エプスタインが、ジョン・レノンに記者会見でベトナムの話をするなと言うんです。つまり、ショー・ビジネスというのは政治的な発言をしてはいけない、ベトナム戦争がどうだとミュージシャンは言ってはいけない、という傾向が1960年代にはあったんですね。それでも、エルヴィスは歌い手として、だんだんトム・パーカーさんのやり方に対して言いなりにならなくなってくるんです。脚本がつまらないから変えてくれという話をするようになるんですね。その中で、1968年にTVで放映されたショーがありました。1968年12月1日にMBCというテレビチャンネルで、スペシャル・ショーで放送されたスタジオライブがありました。その中からお聴きください。「Heartbreak Hotel」と「Jailhouse Rock」。

Rolling Stone Japan 編集部

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