1960年代のエルヴィスは、どう映画の世界から音楽に回帰していったのか





1962年10月に発売になった「Return to Sender(邦題:心の届かぬラヴ・レター)」、1963年6月に発売になった「(You’re The) Devil In Disguise (邦題:悲しき悪魔)」。それぞれ2位と3位でした。1位にはならなかったけどTOP3入りはしたというヒット曲です。1962年のエルヴィスは、シングルが3枚、コンパクトEPが2枚、アルバムが3枚出ています。さらに主演映画が3本あるんです。すごいでしょう。『ブルー・ハワイ』がいかに勢いをつけたかという一つの例ですね。コンパクトEPの5曲入りは映画『夢の渚』、『恋のKOパンチ』のサントラ。アルバム3枚のうち、オリジナルは『ポット・ラック』1枚だけなんですね。他のアルバムは映画『ガール!ガール!ガール!』、『エルヴィス・クリスマス・アルバム』と企画盤だけ。「Return to Sender」は、映画『ガール!ガール!ガール!』の挿入歌でした。3枚のシングルのうち、スタジオ・レコーディングは2枚しかありません。つまり1年間でスタジオでレコーディングされたのはアルバム1枚、シングル2枚だけなんです。他は全部が映画絡みの作品というのが1962年と、この後のエルヴィスの活動形態を象徴しておりますね。すべての活動の中心が映画になっていったんです。なぜそんなに映画に拘ったのか? トム・パーカー大佐という有名なマネージャーがいました。エルヴィスをメンフィスのローカル・レコード「サン・レコード」のオーナーのサム・フィリップから「彼はこれから世に出ていくから守ってやってくれないか」と言われて紹介されたんです。メジャーに売り込んだり、メディア対策を仕切っていたのがトム・パーカーで、ビートルズで言うとブライアン・エプスタインのような存在です。彼が年に3本の映画契約を1969年まで結んでしまったんです。それをレコードにするのが活動になっていった。悪名高きトム・パーカーという別名がついていました。1960年代、改めてどこか複雑な気持ちでお送りしております。オリジナル・アルバムが少なかった1960年代ですが、除隊後の第1作はスタジオのオリジナル盤だったんですよ。『エルヴィス・イズ・バック!』。その中から、「Make Me Know It (邦題:君の気持を教えてね)」、「Such A Night」。

Rolling Stone Japan 編集部

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