悪魔を崇拝する宗教団体、中絶の権利求め立ち上がる

サタニック・テンプルが起こした裁判はいずれも敗訴している

これまでサタニック・テンプルは妊娠して中絶を希望する信者に代わって裁判を起こし、州裁判所や連邦裁判所で度々こうした主張を繰り広げてきた。これまでのところ勝訴には至っていない。今年6月にはミズーリ州を管轄する連邦上訴裁判所が、教義が法律にそぐわないからといって、サタニック・テンプルの信者を一般的に適用される中立的な法律から免除することはできない、との判決を下した。

同団体はこの件を最高裁判所に持ち込むとみられるが、譲歩する様子は全くない。今月に入ってから報道声明を発表し、州の中絶規制から免除されるべきだ、という主張を繰り返した。最高裁が信教の自由をどう扱うか、想像を巡らせているのは間違いない。最終的には最高裁が信教の自由の判例を等しく適用するだろう、と踏んでいるのだろう――国内の主流派の宗教に認めたなら、すべての宗教に認めてしかるべきだと。最高裁がこうした原則の適用に中立的立場をとるかどうかは疑わしいが、仮にそうなった場合、サタニック・テンプルは事実上勝利を手にすることになる。

争点となるのは、「中立的」で「一般に適用される」法律が、それとは相反する信念を持つ人物に適用された場合、信教の自由を侵したことにはならない、という1990年の最高裁の判例だ。この裁判では、ペヨーテの喫煙を禁じる州の法律は、ペヨーテの吸引が信仰に重要だとするネイティブアメリカンにも適用されうる、とされた。問題の法律はネイティブアメリカンに害を与える目的に特化して制定されたわけではなく(中立的)、すべての人に適用されることから(一般に適用される)、信教の自由の訴えは認められない、というのが裁判所の判断だった。

この裁判は判決当日から非難を浴びた。左派は少数派の宗教が州から糾弾されることになる、と主張し、右派はキリスト教徒が起訴されることになる、と主張した。その結果、最高裁でこの判例を覆そうという大々的な運動が起きた。また複数の州で、信教の自由の訴えを保護する法律を制定する動きがみられた。2014年、手芸チェーン店Hobby Lobbyが従業員に対して医療保険制度改革法で義務付けられている中絶手術の保険適用を拒否した裁判では、連邦裁判所は連邦版の信教の自由保護法(他の連邦法に対してのみ適用可)を適用した。

Translated by Akiko Kato

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