悪魔を崇拝する宗教団体、中絶の権利求め立ち上がる

サタニック・テンプル(The Satanic Temple)は以前から、自分たちの信者も伝統的な宗教の信者と同じ権利を享受するべきだと主張している。(Photo by Joseph Prezioso/AFP/Getty Images)

米マサチューセッツ州セイラムに拠点を置く悪魔教寺院「サタニック・テンプル」。同宗教団体が信教の自由を主張し、中絶の権利を求めている。

ここ最近の連邦最高裁判所に関して共通して言えることは、いくつかの重要問題に関して驚くほどリベラルな点だ。ゲイの権利を支持し、中絶規制を無効にし、納税申告書提出の免除を求める大統領の訴えを却下した。たしかにその通りだが、だからと言ってリベラルだとは言い切れない。むしろこれらの裁定とは裏腹に、最高裁はいまだにかなり保守的だ。それがよく現れている分野が信教の自由だ。

最高裁は、アメリカ合衆国の法令において宗教は特別な立ち位置を占めるとの判決を3件立て続けに下した。どう特別かというと、宗教団体は一般的に適用される反差別法令から免除され、予防治療の保険適用を義務づけたオバマケアの遵守を拒否し、宗教学校の学生向けの公的援助を宗教団体に支給するよう州に強制することができる。こうした傾向は、ジョン・ロバーツ最高裁首席判事が就任して以来変わっていない。2012年以来、最高裁に持ち込まれた信教の自由をめぐる訴訟13件のうち、12件で宗教団体が勝訴している。

驚くことでもないが、今年最高裁が判決を下した裁判で信教の自由を訴え、勝訴したのはいずれも主流派であるキリスト教だった。とすれば、少数派の宗教団体が信教の自由を訴えた場合、最高裁(それ以外の裁判所も含め)が同じ姿勢を貫くのか、と疑問を抱くのは当然だ。

ここで登場するのがサタニック・テンプル(The Satanic Temple)だ。昨年、正式に宗教法人として認可された同団体は人類の善意と博愛を信じ、専制支配を拒絶し、常識と正義を標榜する。彼らは長年、最高裁がキリスト教に適用した信教の自由の解釈を、自分たちの信者にも適用するよう戦っている。

サタニック・テンプルがとりわけ力を入れているのが、中絶をめぐる戦いだ。彼らの教義の3番目にはこのように書かれている。「何人の身体も不可侵であり、自らの意思のみに従う」。州が中絶手術に課している障害物レースのような規制は、自分たちが深く信仰する信念に反することから、信者には適用されるべきではない、とサタニック・テンプルは主張している。生殖の権利に関して広報担当者はこうコメントした。「洗礼を受ける前に州のカウンセリングを受けなければならない、という法律を容認するキリスト教徒は誰もいないでしょう。同様に我々の信者にも、教会の儀式を執り行う上で信教の自由を正当に認められるべきです」

Translated by Akiko Kato

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