異常な性支配でカルトのトップに君臨した男、その本当の素顔とは?

セックスなんてない、あるのは理想主義

「最近メンバーの1人から、すごく面白いコメントをいただきました。『私は20年間集団にいました。セックスなんて出てきませんでしたよ?』と」とヌージャイム監督は言う。

こうした発言に反論する上で、ヌージャイム監督にまったく偏見がないわけではない。彼女自身もネクセウムと個人的つながりがある。2008年、リチャード・ブランソン氏が所有するネッカー島で会議に出席した際、シーグラム社のもう一人の後継者で、ネクセウム最高幹部の1人だったサラ・ブロンフマンと出会った(妹のクレアは最近ネクセウム事件に関連して、金銭目的での不法移民の隠蔽・隠匿共謀で有罪を認めた)。その2年後には、ネクセウムが力を入れていた16日間の強化講座「上級サクセスプログラム(ESP)」を受講した。「講義内容や、そこで出会った一部の人々にとても感銘を受けました。彼らはみな、自分たちの生活を変えられる、倫理的使命で世界を変えられるという共通した信念を持っていたからです」と、ヌージャイム監督は言う。「こうした理想主義を誰もが抱いていた。それが新鮮でした」

『The Vow』は(少なくとも、これまでメディアに公開された第7話までは)2人のメンバーの脱会を中心に描かれる。長年にわたる信奉者で映画監督のマーク・ヴィンセント氏と、バンクーバー支部の支部長だったサラ・エドモンソン氏だ。2人は2017年、ニューヨーク・タイムズ紙にネクセウム内の秘密組織DOSについて暴露した。「主人」と「奴隷」から構成されるこの組織は、女性メンバーに食事制限を強制し、彼女たちの体に焼き印を入れていた。

【関連記事】自己啓発団体を隠れ蓑にセックスカルトと化した「主人」と「奴隷」の異常な関係

婚姻関係にあるヌージャイム監督とアメール監督は、夫婦ともどもヴィンセント氏やほかのメンバーと親しくしていたが、2017年、ホームパーティに何人かのメンバーを呼んだ際にヴィンセント氏が現れず、驚いた。のちに本人から聞いた話では、彼のビジネスパートナーであるサラ・エドモンソン氏から、彼女も加わっていた女性だけの組織DOSのことを聞かされて、脱退したという。焼き印を入れられた話や、ラニエール被告が組織を仕切っているという話を聞いて恐ろしくなったのだ、と。「彼は私に、信仰の危機を抱いている、と口にするようになりました」とヌージャイム監督は言う。

Translated by Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE