Spotifyで生計立てるのは「夢のまた夢」 データから見える収入格差の実態

2020年3月5日、メキシコ、メキシコシティのナショナル・オーディトリアムで行われた2020 Spotifyアウォードに出席したJ. バルヴィン(Photo by Manuel Velasquez/Getty Images)


Spotifyのミッション達成は75年後?

「100万人のクリエイティブなアーティストに、自らの作品で生活できるチャンス」を与える、というSpotifyの目標のもうひとつの落とし穴は、同社の「上位グループ」アーティストの人数の成長スピードに関係がある。Spotifyのクリエイターが「自らの作品で生活できる」ようになるには、同プラットフォームのストリームの90%を占める「上位グループ」入りを果たさねばならない。とすると、Spotifyのミッションステートメント――ダニエル・エク氏肝入りの、先を見据えた民主的な野望――はこの先75年は達成できそうにない。

かたやSpotifyは、伝統的な音楽業界の金権支配を打破するという目標に関しては大いに自慢していい。Spotifyの4万3000人強の上位組は、この3年で倍増。2015年と比べると3倍近く増えた。その結果、スーパースターは今後もストリーミングを独占し、新進気鋭の「中堅クラス」のアーティストが少々おこぼれをもらうことになるだろう(テイラー・スウィフトが最新作『フォークロア』で数々の記録を更新したことが、より一層強調される)。

しかしながら、4万3000という数字は100万にははるかに及ばない。仮にSpotifyがこの先もずっと今の上位組の年間成長率(年間1万3000増)を維持できたとしても、4万3000から100万にするには74年近くかかることになる。

先週、音楽情報サイトMusic Allyとのインタビューでダニエル・エク氏は、Spotifyから受け取るロイヤリティが少ないと公然と非難するアーティストが後を絶たないことに失望を示した。「なんとも興味深いことですが、全体の(収入の)パイは増えている一方、パイを分け合う人の数もますます増えているため、非常に限られた人数のアーティストに集中する傾向がみられるのです」 取り分に不満を募らせるアーティストについて、エク氏はこう述べた。さらに、Spotify内では「これまで『ストリーミングの収入に満足している』というアーティストには1人もお目にかかったことがない」とも付け加えつつ、「データがはっきり示しているように」、実際のところストリーミングで生計を立てられるアーティスト層は増加している、とエク氏は反論した。

確かにそれは正しい。定期的にSpotifyからまとまった収入を得ている4万3000人の上位組の大部分は、おそらく(内心では)彼の肩を持つだろう。だがエク氏も、それをはるかに上回るアーティスト――文字通り数百万人――がストリーミングのロイヤリティで生計を立てるのに苦労しているという事実を知らないはずはない。Spotifyが投資家に宛てた統計データから、簡単に引き出せる結論なのだから。

※筆者のティム・インガム氏はMusic Business Worldwide誌の創業者兼出版者。2015年以来、世界の音楽業界に最新情報や分析データ、雇用情報を提供している。ローリングストーン誌に毎週コラムを連載中。

From Rolling Stone US.

Translated by Akiko Kato

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