プログレ史上最高のドラマー、ビル・ブルーフォードが語るイエス、クリムゾンと音楽家人生|2020上半期ベスト5

1981年、キング・クリムゾン在籍中のビル・ブルーフォード(Photo by Paul Natkin/Getty Images)

2020年上半期(1月~6月)、Rolling Stone Japanで反響の大きかった記事ベスト5を発表。この記事は「洋楽部門」第4位。ドラムから離れて10年目を迎えた打楽器のレジェンドが、ブリティッシュ・プログレッシブの三大グループ時代から、ジャズへ移行したアースワークスの結成などを振り返る。(初公開日:2020年1月3日)

音楽界において引退とは、絶対的な概念ではない。しかし現場を離れてから10年が経過しようというビル・ブルーフォードにとっては、言葉通りの意味を持つのかもしれない。2009年に引退を宣言したプログレッシブ・ドラマーのレジェンドは、以来公の場では一度も演奏していない。そして今後も復帰するつもりはないようだ。イエス、キング・クリムゾン、ジェネシスに参加した後は、アースワークスを結成し、長期間に渡りジャズを演奏してきた。ブルーフォードは、ローリングストーン誌の選ぶ史上最も偉大なドラマー100人の16位にランクしている。

「ロックだけでなくあらゆる音楽をやろうと思っていた。でも実際はロックがメインになった。ドラマーとして、選んだものに全力で取り組むべきだと思った」と彼はイングランドのサリー州にある自宅で、ローリングストーン誌との電話インタビューに応じた。「ロックであれジャズであれ、生半可ではいけない。ジャズをやる、あるいはロックをやる、と覚悟を決めるべきだ。または私が常にそうだったように、その中間にいるのもひとつのやり方だろう。今はどんな音楽であれ、真剣に取り組めるような状態ではない。ほかにやりたいことがある。本を執筆しながら孫たちと過ごしたりする方が大切なんだ」

●【画像を見る】ローリングストーン誌が選ぶ、史上最高のプログレ・アルバム上位10選

彼は執筆活動に忙しい。2009年に深く掘り下げ赤裸々に語った自叙伝を出版した後、2018年には刺激的かつドラミングにおけるクリエイティビティを探求するのに役立つ『Uncharted』を出している。同書には、2016年に彼がサリー大学で音楽の博士号を取得した際の研究成果が含まれる。また家族と過ごす時間の合間には、1970年代後半に結成したフュージョンバンド「ブルーフォード」や、オランダ人ピアニストのミケル・ボルストラップとのデュオ、さらにアースワークスなど、過去に出した多くのソロ作品のリイシューにも取り組んでいる。

「いわば“自分のレガシーを作る”作業に巻き込まれていたのではないかと思う」とブルーフォードは言う。「実はかなり感傷的になっていた。自分の作品を後世まで残したいという思いが弱いと認めざるを得ない」



ブルーフォードによる最近のアーカイブ・プロジェクトのひとつに、『Earthworks Complete』がある。アースワークスによるすべてのスタジオ及びライブ作品に加え、多くのボーナスマテリアルも含む豪華ボックスセットだ。20枚以上に渡るCD/DVDのコレクションには、ブルーフォードのシモンズ・エレクトリックドラムを中心に作られたユニークで幅広い音楽志向を持つグループから、より力強いポストボップのアコースティックバンドへの変遷が記録されている。もっと広い目で見ると、ブルーフォードがどれだけジャズに傾倒していたかを理解できる。さらに、絶頂期にあったイエスを離れてキング・クリムゾンへ加入した時から常に、ブルーフォードは自分の信念に従って生きるミュージシャンだったこともわかる。彼は1969年に初めてキング・クリムゾンと出会って衝撃を受けた。その後、1997年まで断続的に同バンドでプレイすることとなる。

ローリングストーン誌とのインタビューでブルーフォードは、イエス脱退に後悔のなかった理由、キング・クリムゾンでプレイすることのスリルとフラストレーション、ジェネシスへの短期間の在籍、ロックからジャズへの変遷、「プログレ(prog)」という言葉に対する複雑な心境など、さまざまな話題について語っている。

Translated by Smokva Tokyo

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