17歳の美少女、ビアンカ・デヴィンズの短い生涯と拡散された死|2020上半期ベスト5

ブライアン・クラークとの出会い

2019年春、ビアンカはソーシャルメディアでブランドン・クラークと出会った。ユーティカから1時間足らずのシラキューズ近辺に住むクラークは、エクササイズとゲームと『魔法少女まどか☆マギカ』が好きな21歳だった。だが彼にも心に大きな傷を残す暴力的な過去があった。彼が12歳の時、父親が母親にナイフを突きつけて10時間立て篭もったのだ。妻に浮気されたと思い込んだのが原因だった。この事件で父親は刑務所送りになった。母親の話では、のちに彼女も別件で逮捕されると、クラークは養子に出されたそうだ。

幼馴染みのジョー(仮名、本人の希望により本名は伏せておく)の話では、子供の頃のクラークは内気で礼儀正しく、度が過ぎるほど几帳面だったという。またのめりこみやすい性格で、ポケモンでも何でも目に留まったもの全てに夢中になった。それでもクラークはどちらかといえばごく普通の子供で、ジョーとも仲が良かった。だがクラークが16歳の時、ロリコン系のマンガにハマり、12歳の少女と携帯メールのやり取りをしているのを知った。ローリングストーン誌が入手したスクリーンショットによると、ジョーは他の友人らと共にクラークを問い詰めた。「いいか、僕がやっていること、やろうと思っていることに君たちは首を突っ込まないほうがいい。きっと気に入らないだろうからね」とクラークは返事を書いている。ジョーはそれきりクラークとは口を利かなくなった。

だがクラークと会ったキムは、チャーミングで礼儀正しい青年だと思った。彼もキムに心を開き、施設や里親の間を行ったり来たりしていた過去を語った。だからビアンカがクラークと一緒にクイーンズのTrans-Pecosというライブハウスにニコール・ドールアンガンガーのライブを観に行くと言ったときも、クラークが車でユーティカまで送ってくれると言ったのもあって、キムには反対する理由がなかった。ビアンカは大喜びした。親の付き添い無しで行くことを許可された、最初のコンサートだったからだ。


トマス・R・プロクター高校の卒業式で、友人ジャンナと一緒に写るビアンカ(写真提供:デヴィンズ家)

話を聞く限り、ビアンカはクラークとの関係をはっきりさせていた。なのでキムはビアンカがあんなに彼氏ではないと強く言っていたのに、クラークが自分をビアンカの恋人だと名乗っていたのを不思議に思っていた。「彼女は17歳で、大学進学を控えていました」とキム。「誰とも付き合うつもりはなかったと思います」。ビアンカの友人クロエも、ビアンカからクラークのキモいメールについて愚痴を聞かされたと言っている。だが、特に誰も不審には思わなかった。結局のところ、クラークも追っかけの1人に過ぎず、追っかけの間ではこの手の執着や少々行き過ぎた行為も珍しくはない。例のメールにしても、「あれだけ大量に送られれば、無視するのは簡単」とクロエも言う。

2019年7月14日、本来であればビアンカは夜が明ける頃に帰宅し、忍び足でリビングルームを抜け、妹と一緒の小さな部屋のベッドに潜り込み、自分で壁に描いたピンクの雲とアニメ風の絵の隣で眠りにつくはずだった。

Translated by Akiko Kato

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