クリス・コーネルの娘が語るメンタルヘルス「きっと父なら、私の弱さを誇りに思ってくれる」

リリー・コーネル・シルヴァー、IGTVの新番組『Mind Wide Open』とメンタルヘルスについて父クリス・コーネルから教わったことを語る(Photo by Jovelle Tamayo for Rolling Stone)

4月も終わりに近づく中、リリー・コーネル・シルヴァーは心の病に苦しんでいた。

コロナウイルス絡みのロックダウンが始まって1カ月が経過し、数週間後には父クリス・コーネルの3回目の命日が迫っていた。不安を打ち明けられる家族や友人、セラピストなどサポート体制は十分整っていたが、彼女はインターネットにさらなるサポートを求めた。だが情報がまったくないことに失望した。

「まったく前例のない出来事で、パンデミック中にメンタルヘルスにどう対処すればいいか、という情報はひとつもなかった。100歳でもない限り、パンデミックを経験した人なんていないものね」。シアトルにある自宅の日当たりのいい部屋から、彼女はZoomでこう言った。「今の時期、私が探していたのはまさにそれだった。でも見つけられなかったから、自分でそういうのを作りたいと思ったの」

ロックダウンと、ジョージ・フロイドさんの事件で感じた悲嘆とその後の怒りをきっかけに、コーネルはメンタルヘルスをテーマにしたインタビュー番組『Mind Wide Open』をIGTVで立ち上げた。毎回ゲストが様々な角度からメンタルヘルスについて話し合う。「当然、私はメンタルヘルスの専門家じゃないわ」と彼女は言う。「悲嘆とトラウマを通じていろんな経験をしてきた、ただの大学生よ。だからその分野の専門家と対話することが私には重要なの」

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番組は先月、父親の誕生日に合わせてスタートした。初回のゲストはTrauma Stewardship Instituteの創設者で、トラウマに関する著書を何冊も出版しているローラ・ヴァン・デアヌート・リプスキー博士。2人はメンタルヘルスについて回る偏見や、世代間に現れるトラウマの影響を深く掘り下げていった。番組の冒頭でシルヴァーは「メンタルヘルスの偏見をなくし、オープンな対話を日常化するのがこの番組の狙い」と語っている。その後もイェール大学感情的知能センターを設立したマーク・ブラケット博士や、メンタルヘルスを抱えるゲイの黒人男性として実体験を語るTikTokパーソナリティ、Sir Carterらとのインタビューが公開された。今後はガンズ・アンド・ローゼズのベーシスト、ダフ・マッケイガンがゲストとして登場する予定だ。

「自分のメンタルヘルスの浮き沈みを公表してメッセージを発信し、他の人々と対話をするなんて、本当に勇気ある行動だよ」と、マッケイガンはローリングストーン誌に語った。「今回の公開フォーラム『Mind Wide Open』は、いままさに起きている現実や、心のよりどころとなる解決策を見事に掘り下げている。リリーもまさに経験者で、今も自分の問題に向き合っている最中だ。こういうやり方を選んだことからも、芯の強い若い彼女の人柄がよく表れている」

多彩なゲストを迎えることで、シルヴァーはあらゆる立場の人々に番組を活用してもらいたいと考えている。「気づいているかどうかはさておき、今は私たち全員が集団的トラウマを経験しているんだってことを、声を大にして言いたいの」。初回を終えた後、彼女はこう言った。「今は文字通り、地球上に暮らす全ての人間が影響を受けている、歴史上数少ない時期だと思う。今回のパンデミックと構造支配は、心に深い傷を残している。そういう傷についての知識を提供して、こういう気持ちになるのは決しておかしなことじゃない、自分一人じゃないんだ、と知ってもらいたいの。私たち全員が、似たような経験をしているのよ」

Translated by Akiko Kato

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