クリス・コーネルの娘が語るメンタルヘルス「きっと父なら、私の弱さを誇りに思ってくれる」

鬱について、父から言われた印象的な話

ーIGTVで番組を始めようと思った理由はなんですか?

父が亡くなって1年経ったころから思い悩んでたの。父は私の病気のことをちゃんと理解して、気持ちを分かち合って、肯定してくれた。番組を始めたのは父のためなの。きっと父なら、私の弱さを誇りに思ってくれると思ったから。他人に手を差し伸べなさい、自分の心のままに進みなさい、と父からはいつも言われていたわ。

メンタルヘルスをテーマに取り上げたのは、私はこれまでずっと不安障害や悲嘆、PTSDに悩まされてきたから。自宅検疫中はものすごく苦しかったわ。人々が悩んでいる大きな理由は間違いなく、メンタルヘルスは触れてはいけないもの、という偏見だ思う。私自身も、病気のせいでいろんな経験をしたわ――公開フォーラムでもね――。だから、どんなやり方であれ、どんな形であれ、自分の経験を語ることで、誰かに恩返しできて、かつ他の人を助けられるなら、やってみたいと思ったの。

ー『Mind Wide Open』というタイトルの由来は何ですか?

実は、『Mind Wide Open』というタイトルは父からヒントをもらったの。高校生活最後の年に、詩の授業があってね――いかにもシアトルらしいでしょ(笑) 。(家族の)古い文献を探してきて、それを題材に詩を書くという宿題がでたの。(父が遺した)90年代の歌詞に、忘れられないこんなくだりがあった。“死んだも同然/最高の嘘を聞いたもんだぜ/睡眠は光に向かって目を閉じること/死は精神を全開にすること”。それがずっと頭に残っていて、ガンガン鳴り響いていたの。

メンタルヘルスや父のための番組作りについて言えば、精神をオープンにする方法は他にもいくらでもある。他の人たちとこういう会話をすること、メンタルヘルスの話題に対する偏見をなくすこと。それが精神を全開にする私のやり方なの。とてもショッキングな形で大事な人を亡くしたり、自分も自殺願望を抱えていたことで、精神を開放する別の方法はないかと考えるきっかけになったんだと思う。この番組は間違いなくそうした方法のひとつだわ。

ーお父さんとは鬱についてよく話をしましたか?

父とは同じ経験者として話をしたわ。私は子どものころから不安障害で、父はそれを肯定して、そうやって私を安心させてくれた。12歳ぐらいの時に父がこう言ったの。「父さんが12歳の時も、夜ベッドで眠れなくて、ずっと心臓がバクバク鳴っていたよ」(と言って、彼女は鼓動のように胸を叩いた)。「心臓発作を起こすんじゃないかと思った」。父はいつもこう言ってたわ、「正直、おまえが(不安障害に)なったのも当然だ。父さんもずっと苦しんできたんだから」。きっと大丈夫、と言われているようで、すごく安心できたわ。

父がよく言っていたことで、今も泣きそうになることがあるの。「愚かな人たちは不安にならないんだ。お前は結果がどうなるか心配で、あらゆる可能性を考えて、あらゆる最悪の事態を怖がっている。それはお前が賢くて、脳が猛スピードで回転しているからさ。最低な気分だし、迷惑極まりないが、うまく活用すれば、自分や他の人の役に立つ方法が見つかるよ」。きっと父はそうやって私を落ち着かせようとしたのね。

ー鬱や不安障害の対策として、なにかヒントを教えてもらいましたか?

ええ。呼吸法とか、他の人に助けを求めるとか、父が習ったことだけど。でも正直なところ(父との会話は)どちらかというと説得に近かったわ。私が飛行機に乗るのを怖がると、アラスカ航空のパイロットは何時間も訓練しているから大丈夫だよ、とよく言っていたわ(笑)。

誰でも人生において、そういう緩衝材のような存在が必要だと思う。心を開くことができて、重荷だと思われるんじゃないかとか、批判されるんじゃないかと心配しなくていい存在。私にとっては母もそういう存在よ。

Translated by Akiko Kato

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