米ディズニー・ワールドの従業員が激白「約1400円の時給で、感染のリスクにさらされる恐怖」

「時にマネージメントは、安全よりも顧客満足度を優先する」

当然、私や同僚たちの頭には大きな疑問が浮かびました。入場制限はあるのだろうか? 一体どうやって、ゲスト全員を常に6フィート離しておくのか? どうやってゲストにマスクの着用を徹底させるのか? 行列の割り込みを止めさせることもできないのに、ゲストにマスクの着用を指示することができると思っているのでしょうか。私たちキャストの身を守るためにルールを守ってください、なんて言えるのでしょうか? (ですが)私は職場に戻ることにしました。私に残された選択肢は、職場に戻ってお金を稼ぐか、1日中家にいてパニック状態でいるのか? だとしたら職場でパニック状態になって、その分お給料をもらった方がマシです。

私が働いているマジック・キングダムでは、従業員は駐車場からバスに乗って持ち場に向かいます。バスに乗る時は、全員がマスクを着けているか確認が行われます。それから乗車の際に配布される安全ゴーグルを着用します。バスを降りたら、普通ならそのまま持ち場まで歩いて行って、タイムカードを押して、控室で待機しますが、今は一列に並びます。5~10人ずつ部屋の中に入って、消毒液で手を消毒し、タイムカードを押します。出勤を押したら、また手を消毒します。それからマネージャーのところへ行って、セルフチェックで異常がないか訊かれます。基本的には、検査でCOVID-19陽性と判定されたか、あるいは陽性と判定された人と接触したかどうか、という質問です。その後マネージメントスタッフが――毎日必ず――検温します。ゲストにもやっていることなので、素晴らしい対応だと思います。ですがご存じの通り、COVID-19に感染しても無症状の人もいますから、長い目で見た場合、実際どれほど効果があるでしょうね。

キャストはフェイスシールドを着用し、衣装係から支給されたマスクを3枚重ね付けします。まるでエイリアンみたいな格好です。私の父は救急隊員ですが、父とまったく同じ装備、同じPPEを身に着けて毎日仕事しています。びっくりですよ、私の仕事はジェットコースターのオペレーターなのに。

ウイルスの検査は義務付けられていません。ディズニー専用の検査所もありません。自分の持ち場からCOVID-19の陽性判定者が出た場合、必ず検査を受けるという規則も一切ありません。上層部に報告する場合もありますが、上層部のほうから私たちへの報告義務はありません。キャストの中には、陽性と判定されたことを同僚全員に自主的に伝えて、あなたも検査を受けに行った方がいいわよ、と言う人もいます。ですが、ディズニーは(必ずしも)一緒に働く仲間に陽性判定者が出たと教えてくれません。

[編集部註:このことはローリングストーン誌が入手した内部メールでも確認された。メールには、ディズニー側は「COVID-19の感染が確認された従業員を特定する情報を開示しない」が、「必要に応じて」濃厚接触者には情報を共有する、と書かれている。取材したもう1人のキャストいわく、陽性と判定されたキャストはマネージャーに報告することになっており、マネージャーは彼らの近くで働いていた他の従業員に、検査を受けて2週間自宅待機するよう通知することになっている。ディズニー側は、公衆衛生局との協議に基づいて陽性判定者が出た場合の手続きを実施していると述べた]

正直、マネージャーには難しい選択だと思います。当然キャストの安全は維持しなくてはなりませんが、ゲストを喜ばせるのが最優先です。たとえばスペース・マウンテンでは、アトラクションから降りた後に写真コーナーがあります。写真を見たい人は、写真が出来上がるまで数秒間、その場で立って待っていなくてはなりません。その間、他の4組の写真も表示されています。つまり、ゲストが密集状態で待つことになるのです。そこへ私たちが「みなさん、ここに立たないでください、6フィート離れてください」と言わなくてはいけない。マネージメント側には悩みどころです。ゲストを満足させたい、ゲストに写真を見てもらいたいんですから。そこへきて私たちキャストが、ゲストが密集していて不安だ、と(マネージャーに)意見しても、聞いてもらえるとは限りません。時にマネージメントは、安全よりも顧客満足度を優先しますから。

おおむねうちのマネージャーはCOVID-19の重大さや、、世界的パンデミックがいまも続いていることを理解していると思います。中にはもっと深刻にとらえている人もいると思いますよ。たとえば、マネージャーの1人がマスクを着けずに歩き回っているのを見かけましたが、こんな時にそれがまかり通るわけがありません。でも大変ですよ、数千人を相手に、安全が約束できない環境で働けと言うのはかなり難しいような気がします。

Translated by Akiko Kato

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