米ディズニー・ワールドの従業員が激白「約1400円の時給で、感染のリスクにさらされる恐怖」

米フロリダ州のディズニー・ワールド。賛否両論のなか営業再開(Photo by Andy Martin Jr./ZUMA)

キンゼイ・ドーレ氏は、米フロリダ州オーランドのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにある4つのテーマパークの一つ「マジック・キングダム」で働く従業員(キャスト)だ。トゥモローランドにあるスペース・マウンテンのオペレーターで、キャストの労働組合「UNITE HERE!」オーランド第362支部の代表委員でもある。

ディズニー・ホテルとウォーター・パークのライフガードとして勤務し、2018年にマジック・キングダムのお気に入りのアトラクション、スペース・マウンテンに転属された。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデミック以前は、ロケットの発進操作、ゲストのマジック・バンド(入園児に配られるデジタル化されたリストバンド)のスキャン、安全バーをチェックしてゲストの安全確認、という業務をローテーションするのが平均的な1日の流れだった。今でも業務内容は変わらないが、死に至るやもしれぬ病にかかるのではないか、と不安を抱えながら毎日通勤している。再開するまでは「Targetに毎日買い出しにいくのも怖かった」と彼女は言う。「営業を再開して1カ月ほど経ちましたが、いまでも職場に行くのは不安です」


ディズニーは労働組合の協力のもと、営業再開のための安全および衛生ガイドラインを設置。来園者の人数制限、ソーシャルディスタンス対策の徹底、2歳児以上のゲストには全員飲食時以外マスク着用を義務付ける、といた内容が盛り込まれている(最近になって園内の食べ歩きも禁止された)。多くの従業員がディズニーの安全対策を称賛しているが、ローリングストーン誌が取材したドーレ氏ともう1人の従業員はまだまだ改善の余地があると語った。ディズニーの広報担当者はローリングストーン誌に宛てた声明の中で、「4万8000人のキャストが所属する7つの労働組合が、従業員を職場に復帰させることで合意しました。今後も状況の変化に応じて、随時対策の評価と調整を継続してまいります」

ローリングストーン誌はドーレ氏に園内での労働環境について話を聞いた。彼女の話の細部は、複数のメディアの報道、園内で働く別のキャスト、ディズニーによって事実であることが確認された。以下、取材の抜粋を一部編集を加えてお届けする。

「地球でもっとも幸せな場所が閉鎖されるのは、ものすごく不思議な気分でした」

私は根っからのディズニー人間です。最初にディズニー・パークに行ったのは5歳の時。魔法の世界にすっかり魅了されてしまいました。おそらくそういう理由でディズニーで働いている人は多いと思います。ディズニーの魔法にかかっている人がほとんどです。私はずっと、他の人たちにも魔法をかけたいと思っていました。マジック・キングダムの中ではスペース・マウンテンが一番好きだったので、次からそこで働くことが分かった時はすごく感激しました。以来ずっとそこで働いています。

一時解雇の話が上がった時、みんな当時はそこまでする必要はないだろうと考えていたんじゃないでしょうか。私が話を聞いた人のほとんどが、せいぜい1~2週間程度だと思っていたそうです。私自身、いつまで閉園するのかわかりませんでした。まさか3カ月半も続くなんて。それだけ尋常ではなかったということです。キャストは全員混乱していました。世界的パンデミックを経験しているだけでなく、地球でもっとも幸せな場所が閉鎖されるのは、ものすごく不思議な気分でした。1970年代の開業以来、閉園したのは5回だけ。それも主にハリケーンが原因でした。

6月中旬、職場に復帰することがわかりました。最初は組合の上司から、そのあと風の噂で耳にしました。最終的にディズニーは、大量のメールや電話でみんなに連絡したんだと思います。でも最初は、みんな訳が分からずにいました。物販や飲食部門では招集されなかった人もいましたが……アトラクション部門は全員が呼び戻されました。

Translated by Akiko Kato

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