ミュージシャンの社会の中での地位、手島将彦と竹田ダニエルが語る

手島:僕は基本的にほとんどのことは世の中のせいだってスタンスで。何か辛い状況にある人って、大体社会とか周りの環境の方に問題があると思うんです。だからこそ、社会も個人ももっと色々な選択肢を選べるようにした方がいい。なぜか3つくらいの環境の中から選ばないと、みたいな思い込みみたいなものもあって。東京で今通ってる学校に友達はいないけど、福岡の人と繋がってすごく気が合うんだよねってこともある。自分の居場所や選択って実はもっといっぱいあるはずなんだって気づくように、環境を増やすっていうこともやっていければいいなと思いますね。あと、日本はいまだに苦手克服が美徳みたいなことが多いですよね。目的があって苦手克服するならいいんですけど、とりあえず苦手を克服しなさいって言われても、何の意味があるの? と思ってしまう。

竹田:今までのメディアも、成功した人の成功例だけを示すことが多かったですよね。それだけじゃなくて、他業種のビジネスをやってるとか、人権問題に声を上げてるとか、同じ問題意識を持ってる人と繋がれることもすごい糧になる。アーティストで言えば、自分と同じようなジャンルじゃなくても共鳴する人もいるかもしれない。多様性に目を向けた瞬間、同じ生き方に目を向けた仲間がいるという事実は、精神論だけど糧になると思います。

手島:あと、僕はメンタルの問題って、誰しも共通の問題になるからこそ、何かを変える力になるのかなと思っていて。つまり、共通の問題意識があると、違う物ものが噛み合い出すことがあると思うんですよ。例えば、科学的な根拠もなく、ある治療薬の使用には絶対反対って言う人に、これは科学的に絶対安全だから使ったほうがいいって言っても大体の場合議論は平行線になります。大切なのはその2人の共通目的は「健康でありたい」ということ。そこを共通の問題として共有することを意識することで議論と対話がようやく始まる。メンタルの問題って、程度の差はあっても、共通のテーマになりうることだと思うんです。だからこそ、何かのタイミングでミュージシャンからもそういうことが発信されることで、何か環境を変えていこうよっていう動きが出てくるきっかけにもなるんじゃないかな、と思うんですよね。

竹田:身近でアーティストチームの中にいる人が、精神的に追い詰められて辞めますっていうことが結構よくあるんです。アーティストもその事に薄々気づいていていても、話題にしてはいけない雰囲気があって。結局、そのスタッフがチームから外れてしまった時に責任を一番感じるのは、アーティストだったりするんです。何よりも、そういうスタッフの問題をアーティストに隠してるっていうことは、アーティストに同じ問題が生じた時に、周りのスタッフは本当に向き合ってくれるのか? 隠そうとするんじゃないか? という不信感が生まれてくることだと思うんです。一番近いスタッフと、どういう問題にどう向き合っていくのか毎回協議したほうがいい。繊細だから触れない、タブーにしようっていうよりは、皆にとっても大事なことだし、オープンに言える環境だからこそ助けを求められるようになる、ということに行き着くと思うんですよね。

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