AK-69が問いかける表現者の本質、ヒップホップで培った信用

ー諦めてたっていうのは?

たとえばその後彼らは東京ドーム2daysもやっているけど、俺はドームでやることを口にしてこなかったんですよ。「ドームはさすがに無理だな」って思ってたから。でも、目標に掲げようとしなかった自分を、そこでも恥ずかしいと思いました。

ーその思いが今作に通底していると。

今の時点で(ドームを)やると言ってもイベントの制作会社はOK出してくれないだろうけど、それでも目標を掲げることが大事だと思うから、ツアーの終盤に「ドームに向かう」と公言したんです。そのビジョンをみんなに共有して、そこで生まれたアティテュードが今回のアルバムに詰まっているんじゃないかと思います。聴く人が聴くと、俺の存在が全国に蔓延し始めた『THE RED MAGIC』の頃の勢いを感じるような作品になっているんじゃないかな。実際、iTunesでの試聴が始まってからは、お客さんからもそういう声を聞くんです。そうやって往年の俺が帰ってきたって思ってもらえるのは、みんなが笑うような目標をこの時期に掲げたってことが関係しているんだろうなって思います。

ー「ROCKIN’ON JAPAN」でのお話が象徴的だと思いますが、たとえばアメリカでは遥かにヒップホップを聴いているキッズが多い中、この国では受け入れられ方に大きな違いがあるのが事実で。現実的にそういった面での難しさを感じるとことはありますか。

フェスにしろ、普段のライブの規模感にしろ、実際それは凄く感じますね。この国ではロックがポップスで、ヒップホップはニッチなものになっている。世界では一番ポップな音楽がヒップホップになっているのに、日本だけがガラパゴス状態だなって凄く思います。でも、それを変えていくのも最前線に立っている人間の役目だと思うんですよね。それって若いラッパーに人気が出てきたら変わっていくかって言ったら、そうではないと思うんです。

ーというのは?

今は舐達麻のような、どっちかって言ったらアンダーグラウンドっぽい切り口の奴が普通に流行っていて。若い子達が彼らの音楽を聴いているっていうのは変わり始めた兆しだと思うので、凄く良いことだと思います。でも、大きな仕組みを変えることは若い子達にはできないわけで、それは繋がりや地位があることを最大限利用して、根回しも含めてヒップホップが市民権を得られるような仕組みを作って訴えかけていかないといけない。それが俺の役目だってことを、そうした場面に遭遇する度に思いますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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