トランプ大統領のTikTok禁止、米国内のネット右翼はどう受け止めた?

TikTok以外のプラットフォームに乗り換える右派クリエイターも

以前にも本誌が取り上げたように、TikTokはピザゲート(2016年の大統領選機関に広まった、ヒラリー・クリントンの関係者が人身売買や児童性的虐待に関与しているという陰謀論)や反ワクチンといった極右的な陰謀論の拡散を放置したとして非難されてきた。だが、筆者がインタビューした右派クリエイターたちは、TikTokが右寄りのコンテンツに対していつになく厳しく、彼らのコンテンツの大半をプラットフォームから削除したとして怒りをあらわにした。

BLMを揶揄するコンテンツや“ANTIFAによる暴力”を非難するコンテンツを投稿し、5万8000人のフォロワーを持つクリエイターのVicente Byrneさんは、コンテンツの約10パーセントがTikTokから削除されたと語った(エプスタイン被告の元友人ギレーヌ・マクスウェル被告に関する最新の動画も含め)。Vicente Byrneさんは、TikTokの利用が禁止されれば、Instagramがローンチ予定のTikTokふうの競合短時間動画アプリInstagram Reelsへの乗り換えを検討している。「Facebookが保守派フレンドリーな企業だとは思わないけれど、そこまで心配してないよ。TikTokでは毎回コンテンツを削除されるけど、InstagramやFacebookではそんな経験はないから、僕からすれば、TikTokよりこっちのほうがいい」と彼は語った。

【画像】ジョンベネちゃん殺害事件とエプスタイン元被告を結びつける陰謀論

来たるTikTok利用禁止を前に多くのブランドがメインストリームのクリエイターたちとのコラボレーションから手を引いた一方、右派クリエイターたちが置かれている状況は異なる。というのも、そもそもブランドは政治色の強いクリエイターと仕事することに対して及び腰なのだから。右派クリエイターのなかにはトランプ派の学生団体やグッズ&アパレルブランドと仕事をする者もいるが、政治色の強いクリエイターが敬遠されるからこそ、彼らはメインストリームのクリエイターほどTikTokに頼りきっていない。「そこまで慌ててないよ。だって、ほかの選択肢もあるから」とAce Echolsさんは言う。「神様が、より良い方向へと導いてくれるさ」

Ace Echolsさんが言う選択肢のなかには、Trillerも含まれる。TikTokに似た短時間動画投稿アプリは先日、人気TikTokユーザーが集まるSway Houseのメンバーであり、TikTokクリエイターのJosh Richardsさん(フォロワー数:2000万人)をデジタル戦略のチーフオフィサーに迎えたと発表した。そのほかのユーザーは、8月初旬にローンチされるInstagram Reelsを待っている状況だ。右寄りのユーザーが好んで使うParlerは、反検閲プラットフォームを自称することでますます人気を博している。

当然ながら、マイクロソフトの買収が成功すれば、インフルエンサーたちに代わって我々が検証してきたことは無駄になるだろう。だが、トランプ支持という見解が見受けられるプラットフォームに大統領自身が反対することに懸念を抱く右派インフルエンサーは少数だ。結局はVicente Byrneさんが小馬鹿にして言うように、「SNSが使えないからといって誰もジョー・バイデンに投票しない」のだ。

Translated by Shoko Natori

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