AAAMYYYが語る、楽器とサウンドメイキング

音色が無限にあるからこそ「縛り」や「制約」を作る

ーそういう意味では、ソロ活動、Tempalay、TENDREなど表現形態によってキーボードの音色も意識的に変えているのですか?

AAAMYYY  変えていますね。ソロ活動では携帯アプリやソフトシンセを使うことが多く、Tempalayではエグ味があって存在感の強い音色をよく使っています。逆にTENDREでは、ベル系のサウンドと、カットオフで表情をつけられるパッドサウンドの2種類しか音色を使わないようにしようと自分の中で決めていて。シンセでは出せないような「音ネタ」「声ネタ」が欲しいときにはサンプラーも使ってますけど、TENDREってライブだと割と大きな編成なので、それぞれを引き立たせるためにも自分は音色少なめにしているんです……これもまたお料理に喩えて恐縮なのですが(笑)、最後に塩胡椒を振るような感じというか。

【画像】AAAMYYYの使用機材(Tempalayライブ時のセッティング)(写真5点)

ー塩と胡椒の2種類で味を引き出すわけですね(笑)。Tempalayではどんなシンセを使っているのですか?


AAAMYYY 割とエフェクターを噛ませることが多くて。例えば BANANANA effects ABRACADABRAというシマーリバーブやピッチシフトが搭載されたエフェクターを、ピアノに噛ませたり、Prophet’08にシタールエフェクターをかけて、(Tempalayの)「のめりこめ、震えろ。」の間奏のフレーズを作ったりしていますね。



ーシンセは音色をセレクトするセンスも問われると思うのですが、AAAMYYYさんは普段どんなところから音色のインスピレーションを得ているのですか?

AAAMYYY  やっぱり、いろんなアーティストのライブですね。アーティストのライブ映像を観たり、フジロックでは他の人たちのステージを覗きに行ったりするんですけど、そこで使われている機材や音色などに刺激を受けたり、「あの曲ってこのシンセの音だったんだ!」って発見したりするのがとにかく面白いんですよ。

ー最近だと誰に刺激を受けました?

AAAMYYY  Tame Impalaの新作『The Slow Rush』がすごく良かったです。元々彼らの音楽は好きだったんですけど、今作を一通り聴いた後にいろいろと分析してみましたね。「これはきっと、この機材を使っているのだろうな」とか(笑)。インパラの曲ってシンセのように聴こえても、実はギターで出しているところとかも彼らは面白いんです。それからUnknown Mortal Orchestraのルーバン・ニールソンが、ポートランドにある自宅の工房で楽器や機材を作っていて、そういうところからも刺激を受けています。



ー今、AAAMYYYさんが最も共感するキーボディストは?

AAAMYYY  KINGというR&B系の女性グループのキーボーディスト。歌いながら右手と左手で別のシンセを弾いていて、その佇まいが何というか「音が全て見えているんだろうな」という感じでカッコいいんですよ。私もその境地に行きたいなと思っています。



ーDAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)を使い始めたのは、カナダ留学中にAppleのGarageBandを触るようになったのがきっかけだそうですね。

AAAMYYY  はい。GarageBandはAppleのコンピュータにバンドルされていますし、使い方さえ覚えてしまえば誰でも気軽に音楽を作れるツールなので「Appleさまさま」ですね(笑)。それと、さっき話したようにソロではPropellerhead「Figure - Make Music & Beats」という携帯アプリを使って曲作りをしています。

ーどんなきっかけで使い始めたのですか?

AAAMYYY 今はいろんな機材があって、誰もがハイクオリティな音源を作ることができるじゃないですか。そんな中、アプリ形式でお手軽に曲が作れるツールって軽視されがちなのかも……って思ったんです。他にもKORG Monotronのような、コンパクトサイズのシンセも使っているんですけど、意外とこういうチープでシンプルなものを工夫して使った方が、面白いアイデアが出てくることが多いんです。「いい機材を使わなければ、いい曲が書けない」みたいな、自分の中にもあった先入観を一旦リセットする意味で使い始めたのだけど、もう手放せない。移動中とかでも曲が作れる「Figure」は、とっても便利なんです。

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