ポール・マッカートニーが語る、リンゴ・スターとの友情とソングライターとしての信念

共感を呼び込むポールの作曲術

ー実生活で起こったエモーショナルな出来事を曲にするとき、あなたはあえて曖昧に描くというアプローチを取るように思います。この理解は間違ってはいませんか?

ポール:間違っていないよ。とても具体的なことについて書くときでも、オブラートに包むんだ。僕はそうしてソングライターとして成長してきた。例えば孤独感について書きたいときは、エリナー・リグビーの話に置き換える。「リトル・ウィロー」はモーリーン・スターキーの死に大きな影響を受けている。部屋にこもって、ただそのときの気持ちを歌にしたんだ。人生の脆さを表現した曲さ。でも、「Maureen」という曲名じゃない。何のことかは伝わったとしてもね。あくまで曲名は「リトル・ウィロー」だ。僕はいつも物語を作りあげたり、想像を少し付け加えたりするやり方を好んできた。そうすれば感情を表現しながらも、生々しく聴こえなくて済む。「リトル・ウィロー」という名前にすれば、少し聴きやすくなるように思うんだよ。“小さな柳”なら誰でもイメージが浮かぶから、聴いている人たちも共感しやすいよね。

同じアルバムに入っている「カリコ・スカイズ」もみんなが感情移入してくれる曲だ。それは嬉しいよ。僕は人のことを頭に思い浮かべて書くことが多いけど、ときどき曲にしたくなるような出来事が起こるんだ。いつだって喜ばしいことさ。その曲が少しだけリアルに感じられるようになる。僕は自分の気持ちを世界の人たちに晒しているんだ。




ー「カリコ・スカイズ」と「ブラックバード」にはどこか似たところがありますね?

ポール:「ブラックバード」みたいな曲は、アコースティックな曲を作りたいと思って書くんだ。シンプルでそれだけで成立して、ドラムやアレンジを加える必要のない曲だ。「何か1曲歌ってほしい」って言われたら、すぐできるようなね。

アメリカにいたとき、大きなハリケーンに遭ったんだ。名前は"ボブ"だったと思う。それで停電になってしまって、電灯が点かなかった。あるのはロウソクの火だけで、料理も焚き火でやらないといけなかったんだ。図らずも強いられた簡素な暮らしを僕らは気に入った。原始的な生活さ。それが数日続いて、レコードも流せなかったからアコースティック・ギターを持ってかなりの時間過ごした。そうして生まれた曲の断片のひとつが「カリコ・スカイズ」だった。ハリケーンの後の停電の中、ロウソクの火の周りに座って人に聴かせるシンプルで短い曲さ。原始的な停電の日々の思い出だ。

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