「セックス・マシーン」誕生50周年 ブーツィー・コリンズが明かすJBファンクの真髄

ジェームス・ブラウンのバックで演奏するブーツィー・コリンズ


録音はぶっつけ本番、体で反応したJ.B.s

「彼はいきなりこう言った、『準備はいいか?』」そう話すブーツィーの声には、その時の動揺が表れているようだった。「まるで練習ができてないパートをいきなり録ろうっていうんだよ。ロクに練習できないまま録った曲は他にもあった。『スーパー・バッド』とか『ソウル・パワー』とかは曲の基本こそ抑えつつも、ほとんどぶっつけ本番で録った。でも『セックス・マシーン』に至っては、バスの中でちょろっとジャムっただけだ。適当に弾いてただけなのに、いきなりスタジオに入って『準備はいいか?』ときたもんだ。動揺したけど、『もちろんだ、始めてくれ』って返したよ。半ばヤケクソさ。でも彼が『Hit me!』って声を上げた瞬間、俺たちは体で反応した。結果は知っての通りさ」

同曲のシングル盤は各面3分未満の2部構成となっており、ブーツィーは各小節の頭の音(ブラウンは「The One」と呼んだ)を強調したうねるようなベースラインを、キャットフィッシュはジミー・ノーレンのチキン・スクラッチを思わせるカッティングギターを弾いている。同曲でのブラウンは、まさにセックス・マシーンそのものだ。上述の著書『The One』によると、バードは当時「セックス」という言葉をテレビで頻繁に耳にしており、ブラウンと共にその言葉と「マシーン」を組み合わせることを思いついたという(注:スライ&ザ・ファミリー・ストーンがその前年に発表した『スタンド!』には、14分に及ぶジャム「セックス・マシーン」が収録されていた)。「いくぜ!(Get up!)」というブラウンのシャウトに、バードが「立ち上がれ(Get on up.)」とクールにレスポンスを返す。間奏の部分では、ブラウン自身がブルージーなピアノのリフを弾いている(「小粋なピアノ」という彼のシャウトも耳にすることができる)。そして曲の中盤では、ブラウンがこう呼びかける。「ボビー、この辺でブリッジに移るか?」「行っちまえ!」

「『ブリッジに移ってくれ』っていう曲の中間部に入る際の合図を、45年前くらいにどこかで耳にしたんだ」ブラウンは1988年にSpin誌にそう語っている。「俺はそれをリリースの合図として使ったんだ」



ブラウンのリードに従う形で、The J.B.’sは演奏スタイルを目まぐるしく変化させていったが(サンプルによって曲調をガラリと変えるヒップホップのプロデューサーをライブバンドに置き換えたような感じだろうか)、彼らが十分な練習もなしに適応していたことには驚きを隠せない。ブラウンが「シェイク・ユア・マネー・メイカー」とシャウトし、「やり逃げしてもいいか?(Can I hit it and quit it?)」と切り出すたびに、バンドはあの冒頭の4音を奏でた。演奏が終わるたびに、バンドが安堵の息をつくのが聞こえてくるようだ。

ブーツィーは数テイク録ったと記憶しているが、ブラウンはJ.B.s流ファンクネスが迸るような最初のテイクがベストだと断言した。同曲はシングルとして1970年7月中旬にKing Recordsからリリースされ、ソングライターのクレジットにはブラウンとバードのほか、無理難題に応じたレンホフの名前も加えられた。「このスタジオはマジで最高だ」ブラウンはStarday-Kingスタジオについて、1970年9月に本誌にそう語っている。「必要がない限り、もうシンシナティではレコーディングしたくないな」。同曲はBillboardのHot 100で15位、R&Bチャートでは2位を記録したほか、本誌の「史上最高の名曲500選」では334位にランクインしている。

Translated by Masaaki Yoshida

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