音楽でつながる新たな手段、遠隔合奏システム「SYNCROOM」開発秘話

オンライン遠隔合奏アプリケーション「SYNCROOM」



オンライン会議システムやIP電話と異なる点

―遠隔地間の音楽合奏での一番のネックとなるのは、音声の遅れだったと思いますが、そこは御社独自の技術によって音声のズレをほとんど感じることなく、快適に合奏を楽しめるようにしたということですよね。技術的な部分はどのようにクリアしていったのですか?

ヤマハ:SYNCROOMはPC用ソフトウエアなのですが、まずSYNCROOMが回線の安定状況を監視しているんですね。そこで遅延状況を計測します。その計測の結果、一番遅延を少なく音をやり取りできるバッファ・サイズに調整しているんですね。普通の会議システムとかIP電話というのは、会話や会議を成立させるために、受信側で一旦音声を溜めてから吐き出すというようなことをしているんです。それは会話の成立をプライオリティとした設計なんですけど、SYNCROOMの場合は、そこをできるだけ溜めずにユーザーに吐き出すというような処理をしているんですね。とにかく音声の品質と低遅延性の方にプライオリティをグッと振り切って設定されているというのが、SYNCROOMの技術です。


SYNCROOMの画面。これを使うことでオンラインでのセッションが可能になる。

―ユーザーの多くは自宅でWi-Fiを使うような環境にはあるとは思うんですが、どのようなネットワーク環境が望ましいのでしょうか。

ヤマハ:推奨しているのは光回線の有線LANです。専門的な用語になりますが、回線仕様がIPv6(IPoE)という方式で接続されていると、あまり周囲の帯域の奪い合いとかに巻き込まれずに、安定的にネットワークを使うことができるんですね。なので、光回線、IPv6(IPoE)で接続されていて、それがルーターからPCに有線LANでつながっているというのが、まず回線の環境ですね。お使いのPCに楽器から音を放り込む時に、オーディオインターフェイスという楽器用の機器を接続いただいて、そこから楽器を接続いただくと、PCに音を入れるとか、PCから音を出すといったところの遅延がかなり縮まるので、それで総合的な遅延は縮まります。光回線、IPv6(IPoE)、有線LANとASIOドライバ対応のオーディオインターフェイス。こちらを環境として揃えていただけると、快適にお使いいただけると思います。

―音質のクオリティはどのように設定しましたか?

ヤマハ:やり取りできるのは、CDと同等の音質です。48kHzと44.1kHzから選択できます。ネットワークの状況によって、圧縮することもできるんですね。わざと劣化させてデータ量を小さくすることも、調整としてはできるんですけど、ネットワークが不安定だと、何をやってもダメなものはダメなんですよ。今の大容量の光回線であれば、それほど大きな帯域を使っているわけではないので、最高音質のPCM音源で、5人でやり取りしても、使う帯域が15Mbpsもあればできてしまう話なんです。音楽をやるためですから、CDと同等の音質でやり取りをするということは、ミュージシャンにとっては大前提になりますし、うちとしては、高音質でやり取りいただくことを推奨はしています。





―アプリの画面には、「チャット」「Twitter」という機能がありますが、これはどういう使い方を想定したのでしょうか?

ヤマハ:Twitterはアカウントを連携できるので、Twitter・アカウントのアイコンと名前で、SYNCROOMに参加することができます。ルームを立ち上げるという概念なんですけど、ルームを立ち上げた時に、Twitter上でつぶやくことができるんです。「〇〇さんが〇〇というルームを立ち上げました」というようなつぶやきを出すことができるので、それを見た他のユーザーがルームに参加しに来るというような、SNS上のコミュニケーションが取れるんです。チャット機能があるのは、楽器をラインでつないでいると、声を入力できないからなんですよ。別のチャンネルでマイクも接続されている方であれば、マイクからの声も入るんですけど、声でのコミュニケーションが取れない環境で使われるユーザーもいらっしゃるので。同じルーム内にいたら、テキスト・チャットもできる、というような機能をつけています。

―なるほど。そこは考えましたね。ホームページの「ルーム一覧」には、「気軽にセッションしませんか」とか「ヴォーカル募集」など、いろいろなルームがありますが、ユーザーの人たちはどのようなルームの使い方をしているのでしょうか?

ヤマハ:ルームを立ち上げる時の概念として、非公開ルームか、公開ルームかを選べるんです。決まったメンバーで音楽セッションを楽しみたいという方々は、非公開ルームをお使いだと思います。公開ルームで誰でもOKという風に広く構えている方は、実際の知り合いではなくても、「こういうジャンルをやっているので、一緒に音楽をやりませんか?」っていう、出会いを求めながら音楽を楽しもうという方ですね。初期は、ジャズのスタンダードをやるような方が多かったんですよ。誰が来ても、ジャズの黒本のスタンダード曲であれば、「じゃあこれやろう」って言って合わせられる、ちょっと上手な方々が多かったんですよね。それが最近では、VTuberのアバターをやっている人が使っていたりするなど、ジャンルの幅が広がってきています。

―自分たちで合奏を楽しむ以外の、配信などで他の人にも見てもらうような使い方はありますか?

ヤマハ:最近流行なのはツイキャスですね。元々NETDUETTOは、ニコニコ生放送の配信と連携していた時代があって。その時はニコニコ生放送が圧倒的に多かったんですけど。最近はツイキャスとYouTubeも盛り上がってきています。Facebookのライヴ配信も聞いたことはありますが、そこまで頻繁には見たことはないですかね。

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