ポール・マッカートニーが語る、『フレイミング・パイ』を傑作に導いたキーマンとの邂逅

ポールがニール・ヤングに親近感を抱く理由

ーアイダホ州で行ったスティーヴとのレコーディングでは、どの曲に重点を置いたんでしょうか?

ポール:スティーヴの家で3日間かけて「ヤング・ボーイ」をやった。あれは楽しかったよ。何の心配もなし。それが、そのままこのアルバムを作ったときの気分だね。プロモーションに関わった人たちすべてに、"心配は禁止"って言い渡したよ。このアルバムに関しては、午前3時に起きてあれこれやらなくていい。このアルバムを聴いて笑わなきゃだめだってね。

「ヤング・ボーイ」はとても素直な曲でね。きわめて率直な作品だよ。時間と戦いながら、大急ぎで書いたんだ。「ヤング・ボーイ」はロングアイランドに滞在中に書いた。ニューヨーク・タイムズの企画で、リンダがピエール・フラニーと一緒にランチをこしらえたことがあってね(メニューは野菜スープ、茄子の蒸し焼き鍋、アップルソースのケーキ)、その料理が終わるまでの時間を曲作りに充てて書き終えたってわけだよ。



ーレコーディングでスティーヴが果たした役割はどんなものだったのでしょうか?

ポール:スティーヴはとてもいいミュージシャンでね。そういう人に自分のやっていることを認めてもらえると、良し悪しを測るまたとない目安になる。スティーヴの意見は尊重している。

たとえば「それはいい曲だね」とか、彼はほかにこんなことも言ってくれる。「この曲とこの曲はアルバムのほかの曲よりも出来がいいから、このレベルの曲が揃うまで待った方がいい。そうすれば、きっととてつもなくすばらしいアルバムができる」なんてね。だけど僕はせっかちすぎるから、「さあ、どうかな」って感じになってしまう。

彼はギターの演奏でももちろん貢献してくれた。アコースティック・ギターの演奏が必要な場合、スティーヴと僕なら簡単にやれるし、きっといい仕上がりになるって確信できる。そういう実務的な面で力になってくれた。一緒にいて楽しい相手だし、すばらしい才能の持ち主だよ。

ーこのアルバムでは総じてギターが目立ちます。その点、特に意識されたことはありますか?

ポール:たしかに僕はこのアルバムに、ヘヴィーなギター・プレイをいつもより少し多めに加えている。「ザ・ワールド・トゥナイト」もその一例で、いつもなら弾かないようなタフなギター・リフを聴いてもらえる。

初めてリンダと会ったとき、彼女が言ったんだよ。「あなたがあんなヘヴィーなギターを演奏するなんて知らなかった」ってね。僕がそんな風にギターで激しい演奏をするのは何も特別なことじゃなかった。だけど自分で弾きたいからそうしていただけだったから、聴いた人たちが気に入ってくれているかなんて考えてもいなかった。『フレイミング・パイ』をレコーディングすることになったとき、リンダがこう言った。「思い切りギターを弾いてよ。誰かを呼んで全部演奏してもらうんじゃなく、あなたも弾くの」と……。僕のギター演奏は洗練されているとは言い難い。技巧的に特に優れているわけじゃない。そういう意味ではニール・ヤングに似ていると思う。僕は彼に親近感を憶える。きっと僕たちはちょっと似ているんだろうね。

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●【第3回】ポール・マッカートニーが語る、リンゴ・スターとの友情とソングライターとしての信念






コレクターズ・エディションの展開図

ポール・マッカートニー
『フレイミング・パイ』 アーカイヴ・コレクション
<日本盤のみ>英文解説翻訳付/歌詞・対訳付

試聴・購入:https://umj.lnk.to/pau-flaming-pie

●【画像】『フレイミング・パイ』アーカイヴ・コレクションの展開図と関連写真(全10点)




5CD/2DVD <デラックス・エディション>
輸入国内盤仕様/完全生産限定盤
価格:38,000円+税

アビイ・ロード・スタジオでリマスターしたオリジナルのアルバム、ホーム・レコーディングやデモ、スタジオ・レコーディングの別バージョン、ラフ・ミックス、そして「ウブ・ジュブparts 1-6」からのセレクションを含むB面など32曲分のボーナス・オーディオ・トラック、『フレイミング・パイ・アット・ザ・ミルCD(ポールが自身のスタジオを1時間ツアーしている内容)』を収録。

映像素材には「ザ・ワールド・トゥナイト」のドキュメンタリーや、オリジナルのミュージック・ビデオ、EPK 素材、インタビュー、演奏風景、舞台裏の映像などをフィーチャー。そしてリンダ・マッカートニーの撮影した未発表写真を含む128ページのブックレットには、アルバム・アートワークのアーカイヴ、クリス・ヒース執筆のアルバムの歴史についてのストーリー、アルバム全曲解説、ポール、リンゴ、ジェフ・リン、スティーヴ・ミラー、スタジオ担当者などのアルバム参加者たちへの最新インタビューが掲載されている。他にもスタジオでのメモ書きや、手書きの歌詞、ポール・マッカートニー・ファンクラブのオフィシャル新聞「クラブ・サンドイッチ」における1997年の『フレイミング・パイ』発売時の記事などを収載。また、音源は24ビット96kHzのHDオーディオでもダウンロード可能となる。


5CD/2DVD/4LP <コレクターズ・エディション/UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤>
輸入国内盤仕様/完全生産限定盤
価格:128,000円+税

全世界3000セットの完全限定生産。内容は①のデラックス・エディションの全てに加えて、リンダ・マッカートニーのシルク印刷写真6枚と、それを収納するための大理石模様の紙挟み。ハーフ・スピード・カッティングしたリマスター済みアルバムを唯一無二の2枚組LP盤とし、特別な見開きジャケットに収納したもの。

ホワイト・ラベルに手押しのスタンプが押されたホーム・レコーディング音源のLP盤、そしてポールが1996年にアレン・ギンズバーグとコラボレーションして、フィリップ・グラスやレニー・ケイもフィーチャーされている「ザ・バラッド・オブ・ザ・スケルトンズ」が、今回、初めてヴィニール盤として片面エッチング加工の45RPMでカットされる。それにはポスターが付けられる。


2CD <スペシャル・エディション>
価格:3,600円+税

生産限定盤
リマスター・アルバム+ボーナス・オーディオ21曲


2LP
価格:6,500円+税

直輸入盤仕様/完全生産限定盤
見開きジャケットに収納されたハーフ・スピードでカッティング、リマスター180gLPx2+ブックレット


3LP
価格:12,000円+税

直輸入盤仕様/完全生産限定盤
見開きジャケットに収納されたハーフ・スピード・カッティング、リマスター180gLPx2+ブックレット
ホワイト・ラベルに手押しのスタンプが押された未発表のホーム・レコーディング音源のLP盤、その両方がスリップ・ケースに収納

試聴・購入:https://umj.lnk.to/pau-flaming-pie

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