ポール・マッカートニーが今明かす、『フレイミング・パイ』制作秘話とビートルズの記憶

ポールが好んだ「曲作りのゲーム」

ー『フレイミング・パイ』の曲作りはどのようなかたちで進んだんですか?

ポール:新しい曲っていうのは、どこからでも生まれてくる可能性がある。たとえば以前リンダが料理関係の仕事のとき、僕が車でよく送っていたんだけど、あるとき写真の撮影があるっていうので、撮影現場になったケント州の農家まで送って行ったんだ。僕は仕事の邪魔にならないように上の階に行って、ひとりで想像を膨らませながら曲を作っていた。

リンダの撮影は2時間くらいかかるとわかっていたから、それが終わるまでに曲を作ってしまおうと自分で締め切りを決めてみた。そのときできたのが「サムデイズ」だ。その時間内に丸々1曲作ったんだ。普通なら、曲は大方できたけど、残りの部分は来週仕上げようとなるかもしれない。でも僕は完成させてしまおうと思った。撮影を済ませたリンダから「何していたの? 退屈していたんじゃない?」なんて言われても、「ああ、この曲を作っていたよ。聴いてみるかい」って言えるようにね。これはちょっとしたゲームで、僕はときどきひとりでそんなことをやっている。ジョンと僕は昔このゲームをよくやっていた。そういうとき、僕らは1曲仕上げるのに3時間以上はかからなかったと思うな。

●亡き妻リンダが撮影した、ポール・マッカートニーと家族の素顔(写真ギャラリー)

ーこのアルバムでは、かなりの楽器をご自分で演奏していますよね。レコーディングの段取りはどのように考えていたんですか?

ポール:そのあたりについては、あまり深く考えてないんだ。そういうやり方のいいところは、自分にいつも選択肢があるってことだね。つまり本当に極端な例だと、全部ひとりでやってしまえばいい。『フレイミング・パイ』には、そんな風にレコーディングした曲がいくつかある。たとえば「サムデイズ」なんかだと、一旦は、ひとりで全部の楽器を演奏してレコーディングを終えた。『マッカートニー』のときみたいにね。でも最終ヴァージョンの仕上げをしていたとき、少しアレンジを加えてもいいかもしれないと思ったから、ジョージ・マーティンに電話したんだ。彼よりうまくアレンジできる人なんていないだろう?



ーひとりですべての楽器を演奏するときは、何か違いはありますか? そういうやり方だと特にうまくいく部分があるんでしょうか?

ポール:レコードを作るとき、僕は何か決まったやり方があるわけじゃない。そういう決まったやり方に従わなくてもいいというのは贅沢なことだよ。でも、ある特定の方向に進みたくなる何らかのきっかけはいつだってある。

たとえば、昔のビートルズの曲を聴き返して、あのころの気ままな自由さを改めて感じたことがきっかけかもしれない。あるいは、自分のレコードを聴いたことがきっかけかもしれない。ひょっとすると、スティーヴィー・ワンダーを少し聴いたことがきっかけかもしれないーースティーヴィーも、ひとりでレコーディングしたレコードをいくつも発表しているからね。

でも、『ケイオス・アンド・クリエイション・イン・ザ・バックヤード~裏庭の混沌と創造』なんかの場合、あれの元になったレコーディングをナイジェル・ゴドリッチと一緒に始めたとき、ナイジェルからこう言われたんだ。「バンドを使わずにやってみようか」ってね。だからあのときは、そのアイディアに乗って、ひとりでレコーディングすることになった。

何らかのきっかけはいつだってあるし、そのおかげで「ああいうのをちょっとやってみようか」って思うわけだ。『フレイミング・パイ』の場合、きっかけになったのはたぶんジェフ・リンだった。

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●【第2回】ポール・マッカートニーが語る、『フレイミング・パイ』を傑作に導いたキーマンとの邂逅
●【第3回】ポール・マッカートニーが語る、リンゴ・スターとの友情とソングライターとしての信念




コレクターズ・エディションの展開図

ポール・マッカートニー
『フレイミング・パイ』 アーカイヴ・コレクション
<日本盤のみ>英文解説翻訳付/歌詞・対訳付

試聴・購入:https://umj.lnk.to/pau-flaming-pie

●【画像】『フレイミング・パイ』アーカイヴ・コレクションの展開図と関連写真(全10点)




5CD/2DVD <デラックス・エディション>
輸入国内盤仕様/完全生産限定盤
価格:38,000円+税

アビイ・ロード・スタジオでリマスターしたオリジナルのアルバム、ホーム・レコーディングやデモ、スタジオ・レコーディングの別バージョン、ラフ・ミックス、そして「ウブ・ジュブparts 1-6」からのセレクションを含むB面など32曲分のボーナス・オーディオ・トラック、『フレイミング・パイ・アット・ザ・ミルCD(ポールが自身のスタジオを1時間ツアーしている内容)』を収録。

映像素材には「ザ・ワールド・トゥナイト」のドキュメンタリーや、オリジナルのミュージック・ビデオ、EPK 素材、インタビュー、演奏風景、舞台裏の映像などをフィーチャー。そしてリンダ・マッカートニーの撮影した未発表写真を含む128ページのブックレットには、アルバム・アートワークのアーカイヴ、クリス・ヒース執筆のアルバムの歴史についてのストーリー、アルバム全曲解説、ポール、リンゴ、ジェフ・リン、スティーヴ・ミラー、スタジオ担当者などのアルバム参加者たちへの最新インタビューが掲載されている。他にもスタジオでのメモ書きや、手書きの歌詞、ポール・マッカートニー・ファンクラブのオフィシャル新聞「クラブ・サンドイッチ」における1997年の『フレイミング・パイ』発売時の記事などを収載。また、音源は24ビット96kHzのHDオーディオでもダウンロード可能となる。


5CD/2DVD/4LP <コレクターズ・エディション/UNIVERSAL MUSIC STORE限定盤>
輸入国内盤仕様/完全生産限定盤
価格:128,000円+税

全世界3000セットの完全限定生産。内容は①のデラックス・エディションの全てに加えて、リンダ・マッカートニーのシルク印刷写真6枚と、それを収納するための大理石模様の紙挟み。ハーフ・スピード・カッティングしたリマスター済みアルバムを唯一無二の2枚組LP盤とし、特別な見開きジャケットに収納したもの。

ホワイト・ラベルに手押しのスタンプが押されたホーム・レコーディング音源のLP盤、そしてポールが1996年にアレン・ギンズバーグとコラボレーションして、フィリップ・グラスやレニー・ケイもフィーチャーされている「ザ・バラッド・オブ・ザ・スケルトンズ」が、今回、初めてヴィニール盤として片面エッチング加工の45RPMでカットされる。それにはポスターが付けられる。


2CD <スペシャル・エディション>
価格:3,600円+税

生産限定盤
リマスター・アルバム+ボーナス・オーディオ21曲


2LP
価格:6,500円+税

直輸入盤仕様/完全生産限定盤
見開きジャケットに収納されたハーフ・スピードでカッティング、リマスター180gLPx2+ブックレット


3LP
価格:12,000円+税

直輸入盤仕様/完全生産限定盤
見開きジャケットに収納されたハーフ・スピード・カッティング、リマスター180gLPx2+ブックレット
ホワイト・ラベルに手押しのスタンプが押された未発表のホーム・レコーディング音源のLP盤、その両方がスリップ・ケースに収納

試聴・購入:https://umj.lnk.to/pau-flaming-pie

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