伊東歌詞太郎が追求する「夢の正しい叶え方」

ー作品とご自身の核みたいなものが重なっているところを重視すると。

歌詞太郎:そうですね。『デカダンス』の主人公のナツメは、目標とかやりたいことがあって、一生懸命頑張る人なんです。でも、作品の世界全体を見た時に、ナツメは頑張っているけどそれ本当に叶うと思ってるのかな? って思うくらい絶望的な状況なんです。でもナツメ本人はその状況を知らないから、その中で一生懸命に頑張れる。それによってちょっとずつ世界が変わっていくところを見ると、自分の生き様に重なるなと思って。なので今回は、自分のオリジナル曲を作るのと変わらないくらいすんなりできました。

ーカップリングの「僕たちに似合う世界」は先日発売されたエッセイのテーマ曲にもなっています。エッセイでは、5歳の頃から音楽でやっていくんだと決めていたと書かれていらっしゃいました。歌詞太郎さんが音楽を始めたきっかけはなんだったんでしょう?

歌詞太郎:音楽を目指したきっかけをよく訊かれるんですけど、分かんないんですよね。物心ついた時から、なぜか歌を歌っていくことだけは自分の中で決まっていたんです。歌うのは根拠もなく大好きだったんですよね。母親は音楽教師で声楽科出身なんですけど、母親から別に歌も楽器も習ったこともないし。父親も国語教師で、音楽的影響のない家庭だったと思います。ピアノは家にはあったんですけど、自分では弾くことも全くなかったです。



ーエッセイだと、小学校の頃はいじめや家庭の問題で辛い思いをされてきたと書かれていましたが、やはりそういう時も音楽が拠り所だったんでしょうか?

歌詞太郎:当時は音楽が自分を救ってくれたっていう意識もないし、必死に日々を生きていたんです。でも、小学校の昼休みは必ずいじめられる時間だったので、鍵がかかる音楽準備室に逃げていました。楽譜は読めないけど、おたまじゃくしの高低差がメロディラインなんだろうなくらいは分かるので、なんとなくメロディつけてみたり、リズム譜も分からないけど、想像で曲を作りながら歌っていて。それはすごく楽しかったですね。後になって、そういう時はやっぱり音楽が支えてくれていたんだろうな、と気づきましたね。

Rolling Stone Japan 編集部

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