ピーター・フックが語るジョイ・ディヴィジョンの永遠性、ニュー・オーダーとの確執

未だに続くニュー・オーダーとの確執

ーロジャー・ウォーターズが最近こんなことを言ってました。彼とデヴィッド・ギルモアの不仲が続いたせいで、リイシューができなかったピンク・フロイドのアルバムがあるとか。あなたはニュー・オーダーと13年前に袂を分かちました。もう十分な時間が経ったことですし、お互いの意見の不一致も水に流せるんじゃないでしょうか。少なくとも、ジョイ・ディヴィジョンのリイシューについてくらいは。

ピーター:いいや。今朝も弁護士と議論していた。あれは人生で一番馬鹿げたことに違いない。なんでかといえば、向こうの理屈がどうあれ、彼らがニューオーダーを僕からああやって奪ったのは許しがたいことだし、訴訟になって示談に落ち着いたところで、メンバー間になんら理解も関係の改善も起こらなかった。ロジャー・ウォーターズがもうひとりの奴(ギルモア)について話しているのをインターネットで見ていたよ。ギルモアがウォーターズをファンサイトに入れなかったとかで……。

ーバンドの公式サイトが、ロジャー・ウォーターズのソロ作品の宣伝を許可しなかったんですよね。その一方で、ピンク・フロイドのサイトはデヴィッド・ギルモアなどの関連作品なら宣伝する、という。

そういうこと。僕も同じ問題に悩まされている。妙な話だけど、彼らは(裁判で)ピンク・フロイドをテンプレートに持ち出してきた。いや、それはフェアじゃない。ロジャー・ウォーターズがレコード会社とギルモアをその件で糾弾するのはまったく正しいことだ。僕も彼の動画を見てすぐ、次はこれをやるしかないと思ったね。

ーじゃあジョイ・ディヴィジョンのリイシューは第三者経由で出るんですか?

ピーター:いや、僕たちも関わっているんだけれど、いつも結局喧嘩になる。コミュニケーションなんかぜんぜんないからね。時間も金も労力も全部無駄だ。特にこんな歳になるとね。話をまとめるのは無理なんじゃないかな。

ーあなたが計画していたジョイ・ディヴィジョンを記念した催しは2020年5月から2021年1月に延期になりました。現在の状況をふまえると、予定されているギグが実行できる見通しはどんなものでしょう?

ピーター:まったく確信が持てない(笑)。3カ月間もここに座ったままで、自分の1年分の仕事が消え去っていくのを眺めている。ニュー・オーダーと僕のあいだで唯一意見が一致しそうなのは、この(パンデミックの)状況がどれだけクソみたいに酷いかということだ。ジョイ・ディヴィジョンだって同意するだろうと思うよ。出口が見えない。自分がいま思ってるのは――今朝話し合いをしていたときに思ったことなんだけど、こう考えたんだよ。「ああ、神様。どれほど最悪なんだ。こんな状況に追い込まれても優美さや礼節を持つこともできず、同意できるほどの妥協案も見つからないままだなんて」この酷い状況を僕らは耐えてきたけれど、それはあまりにも破壊的だった。僕にしてみれば、アメリカでいま起こっていることを見ているとものすごく恐ろしいんだ。僕らは、そして君らもだけれど、もっとも文明化された国のはずじゃないか。なにを間違えてしまったのかわからない。

ーいや、なにを間違えてしまったかといえば、2016年の選挙ですよ。

ピーター:ボリス・ジョンソンを見て、トランプを見ると、信念がほとんど揺らいでしまうよ。しかも、彼らを選んだのは私たちだ。僕は大抵の場合そんなに政治的な人間じゃない。パーソナルな政治のほうをより信じているし、業というものを深く信じている。それでも、僕らのまわりで世界が崩れ去っていくのを見ているっていうのは、家の中から眺めていても、やっぱり心地よいとはとても言えない。見ないようにしている。ゾンビ映画に没頭しようともしたけど、それまではゾンビ映画を自分が見るなんて思ったことがなかったし、まさかそのほうが実生活よりも動揺しなくて済むとも思わなかった。

Translated by imdkm

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