吉田拓郎と井上陽水、1970年代のライブアルバムを振り返る



1973年7月に発売になりました井上陽水さんのライブアルバム『陽水ライヴ もどり道』から、デビュー曲「人生が二度あれば」。世の中を変えるとかスター街道を突っ走るとか、そういう始まりじゃなかったことは容易に想像ができますね。本人もそんな風になるとは思わずデビューした。自分の思い残す事がないように、自分の人生、自分がその時に思っていた事、親のこと、家族のこと、そういうことを歌った一曲ですね。陽水さんは、喋りながら涙ぐんでいるようにも聴こえました。

去年は50周年ツアーを行なったわけですが、この時には50周年もキャリアを重ねるなんていうことは、本当に夢にも思わなかったでしょうね。この時のライブは基本が弾き語りで、途中にバンドが入るんですけど、そのバックバンドのギタリストの安田裕美さんは先日72歳でお亡くなりになられました。1970年代初めに、親父が61歳だったということをこんなに深く受け止める。当時は60歳を超えるというのは大変だったわけで、それが今は陽水さん自身も70歳を超えて現役であります。

この時のバンドの曲のアレンジは星勝さんですね。彼がプロデュース・アレンジで、『陽水ライヴ もどり道』の後にロンドンに行って、「氷の世界」をレコーディングするわけですね。色々な意味でのターニングポイントなんだということを意識して、このライブアルバムを作った。ライブアルバムというのは、その人にとってのターニングポイントになっている場合が多いですね。陽水さんも、このアレンジを越えたライブアルバムをたくさん出していますが、やはり出発点はこのアルバムですね。そしてアンコールがこの曲でした。



この「夢の中へ」がシングル盤で発売されて、それが売れて『陽水ライヴ もどり道』に繋がって、「氷の世界」に流れていくというのが1970年代の前半、井上陽水さんの序章ですね。東宝映画『放課後』の主題歌でした。安田裕美さん、ご冥福をお祈りいたします。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE