米ポルノ業界、撮影解禁のリスクと現場の悲痛な声

業界のガイドラインが示す「人数問題」

業界の主なガイドラインの一つに、撮影現場に入れる人数を少数の俳優とスタッフに限定する、というものがある。つまり制作会社にとっては、当面集団セックスは論外ということになる。「今後の制作発注は、1組のカップルの基本的なセックスに徹することになるでしょうね」と、制作会社Brazzersの制作ディレクター、ライアン・キャッシュ氏も言う。彼の会社は現在撮影をしておらず、近々再開する予定もないそうだ。

アダルトストリーミングサービス「AdultTime」でコンテンツディレクターを務めるパトリックが言うには(本人の希望でファーストネームのみ)、同社では「複数の男女による絡み、大勢の人間が出演するスワッピングもの」を一時的に停止しているという。特定の性行為、とくに唾液や尿などおびただしい量の体液が交わる行為を敬遠するプロデューサーも大勢出てくるだろう。キスでさえある程度注意が必要だ。「キスは究極の感染経路です」とスタビール氏も言う。「まさに我々も、キスを排除するよう推奨しました。対面接触を減らしましょう、という姿勢です」

だが危険度でいえば、キスが撮影中の他の行為と比べて特に危険だという意見に反対する声もある。アダルト女優兼監督のケイシー・カルバート氏は冷ややかにこう言う。「私の意見を言わせていただければ、他人のものが中に挿入される以上、危険レベルはキスと同じですよ」

こうした理由から、「撮影現場に戻るのをためらう」俳優が大勢いるのは当然だ、とスタビール氏は言う。俳優たちがこぞってOnlyFansのような個人対応のソーシャルプラットフォームに活動の場を移している、というのもある。トップクラスの俳優にもなると、月に6ケタ近く稼いでいる。「OnlyFansやFanCentroで知名度が上がれば、みなそこで満足して、戻っては来ません。(カリフォルニア州で)感染者が増加しているからなおさらです」 俳優の数が減ったことで、キャスティングには特有の問題が生まれた。「今は熟女ものの俳優を探すのが大変です」とカルバート氏は言う。

現時点での最大の難問は検査だ。アダルト業界の検査制度PASSに加盟しているクリニックの多くは、COVID-19の検査を行うことができない。そのため俳優や撮影クルーは、民営企業Talent Testing Service社(TTS)を利用することになる。1回あたり35ドルと比較的安価で検査を受けられるが、一部のプロデューサーがローリングストーン誌に語ったところでは、TTS社は検査結果が出るまでに相当時間がかかる。その結果、俳優や撮影クルーの検査結果が予想以上に遅れ、撮影スケジュールも先延ばしされてしまう。

さらにTTS社はPASS制度に加盟していないため、一部の関係者の間では検査結果がきちんと報告されない、検査結果が正確でない、あるいは俳優が検査結果をごまかすといった懸念が持ち上がっている。「そういった理由で、私も仕事をするのをためらっているんです」とカルバート氏も言う(ローリングストーン誌のコメント取材依頼に対し、TTS社からは返答を得られなかった)。

Translated by Akiko Kato

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