PANTAと鈴木慶一が語る頭脳警察の50年と事件の真相、ロックの未来

発禁歌詞と日劇オナニー事件

ーお二人は英米のロックに影響を受けながら音楽活動をされてきましたが、日本でロックをやることの難しさみたいなものを感じられことはありましたか?

鈴木「洋楽を聴いているから、浮かんで来て作るメロディーは洋楽なんだよね。で、最初は英語でデタラメで歌ってたりする。それを日本語に変えるのは難しかった。PANTAの歌って、例えば『マラッカ』なんて全然歌えない。もう、難しくて」

PANTA「ハハハ」

鈴木「すごいビートの刻み方なんだよ。大量の歌詞を叩き込んでるんだけど、それを譜面で認識しにくいんだ」

PANTA「譜面でやったら難しいんだろうな」


Photo by Hana Yamamoto

ー日本でロックをやるというのは言葉との戦いなんですね

鈴木「そうだね。言葉のリズムと海外のポップ・ミュージックのメロディーをうまく結びつけなきゃいけない」

PANTA「例えば『理由なき反抗』なんかを観てると、ジャックナイフをパーンと出して『このパンク野郎(PUNKS)!』ってジェイムズ・ディーンがケンカするじゃない。不良言葉でFの四文字(FUCK)がいっぱい出てくる。丁寧な言葉でケンカするやつなんていないから。だから、日本でロックをやる時も、そういう言葉を入れなきゃダメなんだよ。頭脳警察を始めた時、『ふざけんじゃねえ、バカ野郎!』とかそういう言葉を使って既存の歌謡曲をひっくり返そうと思ってたのね。歌謡曲ではそんな言葉使わないじゃない? それで(『頭脳警察1』に収録された「言い訳なんて要らねえよ」の歌詞に)「てめえのマ●コに聞いてみな」って入れたんですよ。そしたら当然発売禁止になった。俺だってね、好き好んで歌ってたんじゃないんだ。恥ずかしかったんだよ(笑)」

ー恥ずかしかったんですか?

PANTA「恥ずかしかったよー」

鈴木「生で歌っているのを見たことあるけど、恥ずかしそうにはしてなかったな(笑)」

PANTA「いや、それは歌わなきゃいけない義務感にかられて歌ってたんだから(笑)」

ー日本のロックのために(笑)。

PANTA「そうです、ロックのためですよ」

鈴木「日劇オナニー事件も(笑)」

PANTA「あれは罰ゲームみたいなもんだよ(笑)」

ーワイルドワンズ、テンプターズ、フォーリーブスといった人気グループと共演した日劇ウエスタン・カーニバルのステージ上でオナニーをした事件ですね。映画でその真相が語られてていますが、これも頭脳警察の伝説のひとつですね。

PANTA「ワイルドワンズの楽屋で話をしてたら、そこにテンプターズの大口(広司)君が来て、盛り上がっている間になぜか俺がステージでオナニーすることになっちゃったの。どうやら、加瀬君(ワイルドワンズの加瀬邦彦)が『マスターベーションやっちゃえば』って言い出して周りが焚きつけたみたいなんだけど。それで出番前にトイレに行ったらショーケンが隣に来て『本当にやるの?』って言うから、『やるよ』って突っ張っちゃった。そしたらもう、後には引けないでしょ(笑)。で、歌いながらズボン脱いでシコシコやってたら、写真に撮られて平凡パンチのグラビアに載っちゃった」

ードアーズのジム・モリソンもステージでオナニーをしたそうですが、日本のロックを背負ったPANTAさんも負けてないですね。

PANTA「とても勃つ状態じゃなかったけどね(笑)。オナニーすることはスタッフには秘密だったけど、もし、スタッフにも伝えていたら、多分そこにいたジャニー(喜多川)さんは『YOU、やっちゃいなよ!』って味方になってくれたと思う(笑)」

鈴木「『こっち向いてやっちゃいなよ』って(笑)」

ーパンツを下ろしたのってフォーリーブスの前だったんですよね。かなりショッキングな事件だったと思います。今、アイドルのコンサートでそんなことやったら、社会的に抹殺されますよ。

PANTA「ナベプロには申し訳ないと思ってるよ。一生懸命音楽を普及させようとしているのに」

鈴木「ロックの社会の窓が開いたんだよ(笑)」

PANTA「うまい!(笑)」

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