音楽業界が嫌う著作権裁判の敏腕弁護士、リチャード・ブッシュが闘う理由

リチャード・ブッシュ弁護士(写真左)とマーヴィン・ゲイの遺族。米カリフォルニア州ロサンゼルス2015年3月10日、ファレル・ウィリアムスとロビン・シックは故マーヴィン・ゲイの著作権侵害裁判に敗訴した。(Photo by Los Angeles Times via Getty Images)

エド・シーランのなどの大物アーティストを相手に訴訟を起こし、ファレル・ウィリアムスとロビン・シックを訴え物議を醸した有名な「ブラード・ラインズ」裁判に勝訴した米敏腕弁護士のリチャード・ブッシュ。著作権裁判のスペシャリストとして音楽業界から忌み嫌われる闘う弁護士だ。そんな彼にとって正義とは? なぜ闘うのか? ローリングストーン誌のコラムニストが直撃した。

リチャード・ブッシュ氏とはなるべく関わりたくない——。
すべての音楽会社は、例外なくこう思っている。ブッシュ氏は、その事実をむしろ喜んでいる。

著作権侵害を専門に活動する弁護士のブッシュ氏は、テネシー州ナッシュビルが拠点の法律事務所「キング&バロー」のエンターテイメント部門のトップを務めており、盗みを働く人々相手に訴訟を起こすことで生計を立てている。故マーヴィン・ゲイの1977年のヒット曲「ガット・トゥ・ギヴ・イット・アップ」の一部をスマッシュヒット曲「ブラード・ラインズ~今夜はヘイ・ヘイ・ヘイ♪」に盗用したとしてファレル・ウィリアムスとロビン・シックを訴えた事件はもっとも有名だ。2018年にカリフォルニア州の連邦地裁は、ゲイの遺族に約530万ドル(約5億6700万円)を損害賠償として支払うようウィリアムスとシックに命じた。音楽業界関係者の多くは、この「ブラード・ラインズ」裁判の判決によって盗作訴訟が次々と持ち上がる時代の幕が上がったと語る一方、ブッシュ氏はソングライターのためになることをしたと主張する。

【関連】マーヴィン・ゲイの楽曲盗作訴訟で上訴されたファレル・ウィリアムス、ロビン・シック

「(多くの音楽業界関係者の主張と)まさに真逆のことが言えます。判決のおかげで、他人の作品に頼るのではなく、オリジナルの作品を生み出すためのやる気をソングライターに起こさせることができたのですから」とブッシュ氏は語った。「ファレル(・ウィリアムス)、ロビン(・シック)、ゲイの遺族のようなことは誰だって経験したくありません。訴訟の開始から終了まで、5年近い年月を要したのですから。それに、多くに金額が費やされました(そのうちのかなりの金額は、最終的にブッシュ氏のポケットに収まった)。

ブッシュ氏と彼の顧客たちは、これまでにユニバーサル ミュージック グループ、ソニー・ミュージックエンタテインメント、ワーナー・ミュージック・グループ、ソニーATVミュージックパブリッシング、BMG、Kobalt Musicのみならず、十数名のアーティストやソングライターを相手に訴訟を起こしてきた。そしていま、ブッシュ氏はさらに2件の物議を醸しているケースにかかりきりだ。ひとつは、トラヴィス・スコットのナンバー1シングルの件で3人のプロデューサーの代理人として、もうひとつは2019年にこの世を去ったラッパーのジュース・ワールドの件でパンクバンドのイエローカードの代理人として。

Translated by Shoko Natori

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