家具に子どもを閉じ込め人身売買? 米国発の陰謀論「Wayfairゲート」が拡散中

Photo by Jenny Kane/AP/Shutterstock

7月前半、米国のTwitterで「#wayfair」というハッシュタグがトレンド入りした。Wayfairは家具販売のサイト。NBC Newsのベン・コリンズ氏によると、このハッシュタグの出所は投稿サイトRedditのr/conspiracyというサブレディットとのこと。

Wayfairがキャビネットを輸送コンテナ代わりにして、ひそかに児童人身売買を行っているという陰謀論がこのサブレディットで盛り上がったという。この陰謀論の「証拠」とされているのが、一部のキャビネットの価格が1万2699ドル99セント~1万4999ドル99セントもすること、そしてYaritza、Alivya、Samiyahといった商品名がつけられていること。陰謀論を支持する人々は、これら商品名は被害者の子どもの名前だと推測している。

のちに「Wayfairゲート」と呼ばれるようになったこの説は、陰謀論者の間に瞬く間に広まった。左派の政府関係者がワシントンDCのピザ店でひそかに児童売春組織を運営していたという2016年の陰謀論、ピザゲートとよく似ていたこともあり、支持者の多くはQアノンのサポーターだった。

クレムゾン大学でソーシャルメディアの偽情報を研究するダレン・リンヴィル准教授によると、メンションされた回数はのべ180万回。24時間では60万回もメンションされたという。



「プラットフォームを個別に切り離して考えることはできません。ソーシャルメディアはどれもつながっているんです」とリンヴィル准教授はローリングストーン誌に語った。「今回はTwitterに端を発し、Redditで火がついた後、あっという間に他のプラットフォームにも拡散しました。短時間で広がった理由は、1:みんな家で退屈しているから 2:一部の人々は非常に愚弄だからです」

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当然ながら、児童売春の噂のネタにされたことを好ましく思わなかったWayfairは、すぐに「こうした疑惑は事実無根です」いう声明を発表した。「問題の商品は、業界向けの高品質なキャビネットで、価格も適正です」と、同社はローリングストーン誌に語った。「業者から提供された画像や説明文が、高価格の基準を正しく説明していなかったことをふまえ、ただちに当該商品をサイトから削除しました。今後は名称を替え、価格の基準がはっきりわかるように、詳しい商品説明と適切な画像を掲載します」

この陰謀論はすでに何度も、間違いであることが証明されている。Wayfairの広報担当者はロイター通信の取材に対し、「ファーストネームや地名、よく使われる単語」などを使ってアルゴリズムで商品名を決めていると語った。事実確認サイトSnopesによると、アリヴィア・ナヴァロちゃんなど商品名の元ネタと言われている子どもたちの大半が、実際は行方不明ではなかったことが判明した(ナヴァロちゃんは3歳の自閉症の子どもで、2013年、不運にも散歩中に沼に落ちて死亡した)。児童売春組織の被害者とみられていた1人、サミヤ・ムーミンさんは、Facebook Liveを発信して自ら噂を否定した。

Translated by Akiko Kato

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