米政府がTikTok使用禁止を検討、音楽関係者「最悪な状況になる」

トランプ政権が米国での使用禁止を検討しているというTikTok(Photo by Omar Marques/SOPA Images/LightRocket/Getty Images)

音楽業界にとってヒットを量産するアプリ”TikTok”は、今や必要不可欠な存在だ。だが、トランプ政権は同アプリの米国での使用禁止を検討しているという。TikTokなき音楽業界は、どう変わっていくのか?

「音楽がいま、もっとも必要としているのはTikTokだ」。

これは音楽業界のある幹部が先日発した言葉だが、この手の文句は昨年から比較的頻繁にささやかれてきた。若手ラッパーのドージャ・キャットをポップスのメインストリームに押し上げたり、無名のアリゾナ・ザーヴァスを何十億もの再生回数を叩き出すストリーミングのヒーローにしたり、ミーガン・ジー・スタリオンに初の全米1位獲得へと導いたりとTikTokユーザーは近年のヒット曲誕生に大いに貢献してきた。

大手レーベルのTikTokへの執着は凄まじく、いまではアーティストとの契約前に同アプリでの存在感が重視されるような状況になっている。音楽業界がここまでTikTokにこだわるのは——もはやツアー活動という選択肢がないなか——ヒット曲が生まれる数少ない場所のひとつと目されているからだ。同アプリ内で動きのある楽曲に対してレーベルは大金を払う。なぜなら、彼らには自らヒットを作り出すのに十分なツールがないから。

しかしながら、こうしたレーベルが今後TikTokに頼れない可能性が突如として浮上している。およそ一週間前、トランプ政権は同アプリの米国での使用禁止をほのめかしたのだ。中国のバイトダンス(字節跳動)が運営するTikTokが米国ユーザーのデータを盗んでいるかもしれない——これが表面上の理由である。

米国の音楽業界を骨折から回復しつつある患者にたとえるなら、これは一夜明けないうちに松葉杖なしで歩けと言っているようなものだ。米国でのTikTok禁止は「グローバル、とりわけ欧米の音楽業界にとっての後退を意味し、現在のスピードでヒット曲をネット上で生み出すことが不可能になる」とCreed Media社のティム・コリンズ氏は語る。同社は、500以上のアーティストやレーベルのキャンペーンをTikTokで展開していた会社だ。さらにコリンズ氏は、TikTok禁止によって「フリーランスのアーティストがいまと同等のプレゼンスを維持することが困難になり、結果的に(レーベルとの)交渉の場での力関係にも影響が及ぶだけでなく、音楽業界の非民主化にもつながりかねない」と言い添えた。

匿名でローリングストーン誌に語ってくれたある著名なデジタルマーケンティング担当は、目下ささやかれているTikTok禁止によって「最悪な状況になる」と単刀直入にコメントした。

Translated by Shoko Natori

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