Chara、フィオナ・アップルを語る「このアルト・ヴォイスを聴きなさい」

Charaが語る『フェッチ・ザ・ボルト・カッターズ』

─では、新作『フェッチ・ザ・ボルト・カッターズ』についてはどう思いました?

Chara:やりたいことを、やりたいようにやっている感じがした。きっとデビュー当時は、彼女の才能に集まった旬のクリエーターたちと一緒に曲作りをしていたと思うのだけど、その頃に比べると今は元々あるピュアな部分を前面に出しているというか。そのぶん一聴すると、初期に比べてとっつきにくいところもあるかも知れない。

─確かに、聴けば聴くほど味わい深くなっていくタイプのアルバムだと僕も思いました。

Chara:タイトルソング「Fetch The Bolt Cutters」とかほとんどラップだね。私も最近は、昔よりも言葉を紡いでいくのが好きなのだけど、きっと彼女も言いたいことが山ほどあるんだろうなって。「シング・ライク・トーク」「トーク・ライク・シング」スタイルが昔から結構好きなんです。それもちょっと感じるな。演劇っぽいというか、ミュージカル的な要素もあるしね。もしこれを初期のアルバムのような、カチッとしたサウンド・プロダクションにしたらどうなるのか、ちょっと聴いてみたい気はするけど、でもきっと彼女は、今はそういうのが嫌なんだろうな。



─今回、自宅のリビングでレコーディングをしているみたいですね。愛犬ジャネットの遺骨を叩いたり……。

Chara:え、怖いんだけど!(笑) 私も犬を飼ってるけどさ……やっぱりちょっと変わってるよね彼女。

─現在一緒に暮らしている愛犬の鳴き声を入れたり……。

Chara:ああ、もうそうなってくると(七尾)旅人だね。

─確かに(笑)。

Chara:どんな家に住んでいるんだろう。森の中にスタジオ付きの家があって、そこに住んでいるイメージなんだけど(笑)。


自宅で愛犬と一緒にフローレンス・アンド・ザ・マシーンを聴いているフィオナ

─レコーディングは主に自宅で行われていて、楽器をモノにぶつけたり、バンドメンバーと家の周りをチャンティングしながら行進したり、かなり実験的な試みをしているみたいです。それと、今回からレコーディング・メンバーのエイミー・アイリーン・ウッド(Dr)に、GarageBandの使い方を教えてもらってデモから自分で作ったとか。

Chara:最近覚えたんだ、凄いね。じゃあ、またこれから音楽性もどんどん変わっていくかも知れない。トッド・ラングレンだってさ、数年前のフジロックでは横にお姉ちゃん立たせて踊りながらEDMやっててびっくりしたもん。

─あはははは!

Chara:「昔の曲やってくれない!」って思ったけど、そうやってアーティストは進化していくわけだしね。ガレバン(GarageBand)を覚えたフィオナも次は打ち込みやってるかもよ(笑)。彼女の曲って、さっきの「Fetch The Bolt Cutters」もそうだけど「一筆書き」っぽいイメージがあるから、アイデアが浮かんだらどんどん形にしていきたいだろうし。これからは自由に一人で好きに作ったものもプラスされていくかもね。

─Charaさんもご自宅をスタジオにされているじゃないですか。

Chara:スタジオというか、簡単な作業場だけどね。でも北向きなのがイヤで(笑)、今はお日様の入るリビングでほとんどやっていますね。いいテイクが録れればそれでいいから。

─そういう環境でやっていると、フィオナみたいな実験的な録音を試すこともありますか?

Chara:言われてみれば、確かにインディーズから出した時は、私もフィオナや旅人みたいに犬の声が入っちゃった時もあるし(笑)、家の中のノイズとか入っちゃってもそれがいい感じだったら残したり、あえてループしてみたりすることはあった。鳥の声や水の音とかね、よかったら何でも使っちゃう。アンビエント・ミュージックの発想。

─なるほど。アルバムの中で、他に好きな楽曲はありました?

Chara:「Under The Table」も好きですね。ちょっとアラバマ・シェイクスの『Sound & Color』とか思い出す。というか、きっと受けた影響源が一緒なんだろうね。



─そういう意味では「Relay」や「For Her」を始め、ゴスペル・チャントを取り入れた楽曲も目立ちますよね。それこそCharaさんが参加したTELE-PLAYの第一弾楽曲「あいにいきたい」も、ゴスペル色の強い楽曲でした。

Chara:あの曲はリーダーのコニたん(小西遼)が、「ゴスペルっぽい感じを出したい」って言ったの。私も小さい頃からゴスペルは大好きだったからね。別にキリスト教徒でも何でもないんだけど、初めて聴いたときは子供ながらに「ゴスペル、なんかすごい!」って衝撃を受けたのを覚えてる。あと、『フェーム』という青春映画があって、ゴスペル風のコーラスが入ったアイリーン・キャラの歌う主題歌が、私にとって最初に買った洋楽のシングルだった。



─様々な声が混じり合うゴスペルのハーモニーは、何とも言えない魅力がありますよね。

Chara:ブルックリンのチャーチでも2回、生のゴスペルを聴いたことがあるけど、もう骨にビンビンくるわけ(笑)。実際に歌ってみるとよく分かるんだけど、自分が発した声と、誰かの声が混じり合って共鳴して響き合うって、すごくセクシーなんだよね。

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