米CIAによる心理作戦の手段は「音楽」、冷戦時の噂をジャーナリストが語る

スコーピオンズの名曲がソ連の崩壊をもたらした?(Photo by Richard E. Aaron/Redferns/Getty Images)

ハードロックバンド、スコーピオンズが1990年に発表したパワーバラード「ウィンド・オブ・チェンジ」が、実はCIAが作曲に携わった冷戦末期のプロパガンダの一つではないかという噂がある。今回、提唱者であるジャーナリストのパトリック・ラッデン・キーフがインタビューに応じてくれた。

Spotify、Pineapple Street Studios、Crooked Mediaが共同制作する全8話のポッドキャストシリーズ「Wind of Change」でキーフ氏は、ミュージシャンや音楽ファン、元CIAの工作員、歴史家らとのインタビューを通して調査の過程をリスナーに紹介しつつ、この曲に秘められた真実を解き明かそうとした。

番組の中では、当時アメリカ政府が行っていた文化的な心理作戦、とくに音楽を使った心理作戦の歴史を検証。1950年代や1960年代初期にはアイゼンハワー大統領が、ジャズというアメリカ芸術を現地のリスナーに紹介する目的でディジー・ギレスピーを中東に、ルイ・アームストロングをアフリカにそれぞれ送り出している。

「僕が(Podcastで)伝えたかったことは、冷戦中は複雑に入り組んだ時期があって、そこには政府の手が及んでいたということなんです」(キーフ)

最近公開されたポッドキャストのボーナスエピソードでは、ソ連にパンクロックを密輸入していたカリフォルニアのミュージシャンの話、アメリカ政府がベネズエラで反チャベスや反人種主義的な作曲活動に資金援助をしていたという話が公開されている。



ーポッドキャストという媒体で取材をしていて大変だったことは?


機密情報の世界については前にも記事を書いたことがあるので、裏の世界を書く危険は承知していました。手を焼いたのは、音声で伝えるという点です。以前は、話をしてくれそうな情報筋と実際に会って、メモを取りながら話を聞く。会話を録音したりはしません――そういう状況なら、相手も信頼してくれます。マイクに向かって話してもらうのは全く別物です。秘密工作員のローズとの取材でも、OPSEC(運用上のセキュリティ)じみたことをして、本名を伏せて声優を使わなくてはりませんでした。でも、できるだけ楽しもうとしました。この手の取材がどういうものか、皆さんに少しでもわかってもらえたらうれしいですね。

ー元CIAの人たちがたくさん出てきますが、どういう流れで取材できたんですか?

ゆっくり時間をかけました。実のところ、最終的にポッドキャストに登場したよりも大勢の人にインタビューしたんです。結局ボツになったものもあります。地道な作業でした。人づてに紹介してもらったケースもあります。すごく助かりました。情報機関のコミュニティはサブカルチャーの世界と同じで、僕を保証してくれる審判というか、ブローカーのような人がいるとすごく助かるんですよ。今回はとくにやっかいでしたね、「ウィンド・オブ・チェンジ」を書いたのがCIAかどうかをテーマにしたポッドキャストです、とは切り出したくありませんでしたから。もし出だしからそんなことを言ったら、誰も引き受けてくれませんよ。

Translated by Akiko Kato

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