世界で最も有名な覆面DJ「マシュメロ」をブランド化させた敏腕マネージャー

誰もがヘルメットを被った彼に共感できないのだから、誰もが彼になれる

過去のあっという間の大ブレイクも、スターダムへの急上昇も、すべてはマシュメロというブランドを固持し続けた結果だとシャリジは言う。つまり、クライアントそれぞれの要求に応えながら、常に先手を打った結果だと言うのだ。マシュメロの場合、シャリジは社会不安を抱えた内向き傾向のオーディエンスをどうやって開拓するのかを考えた。「この男は世界で一番有名なDJになったのにあのヘルメットを一度も脱いでいない。彼がショップに立ち寄っても、みんなは彼が何者か知らない。それがみんなをつなげる共通点なんだよ」と、シャリジが説明した。

言い換えれば、誰も彼に共感できないのだから、誰もが彼になれるということなのだ。「2年くらい前に料理番組を始めたけど、今ではYouTubeの『Cooking With Marshmello』にはアップされたエピソードが100本ある。アフガニスタン移民の家庭で育った俺は、早い時期から文化の重要性に気付いていた」とシャリジ。料理は同じ言語を喋らない地域の人たちにもマシュメロの魅力を伝えられる一つのブランドとなった。例えば、中国やインドの子どもたちは、両親が作る夕食と同じような料理をマシュメロが手際よく作るのを見てワクワクするのだ。



シャリジとマシュメロが料理番組の次に作ったものが「Gaming With Marshmello」。彼らは「フォートナイト」内でコンサートを行った最初のアーティストで、このとき、1070万ビュワーという記録を達成したのである。ちなみに、このビデオ・ゲームのプラットフォームには今年初めにトラヴィス・スコットがゲスト出演している。シャリジ曰く、「彼らはあのゲームを史上初めてシャットダウンしたんだよ。みんな何もできなくて、コンサートに参加するしかなかった」





マシュメロのブランドチームが唯一合意したパートナーシップは、“マシュメロ提供のStuffed Puffs”というチョコレートが中に入ったマシュマロで、これは発売前に100万袋のオーダーが入った。現在ではウォルマートで最も売れるマシュマロだ。シャリジは「多くの人が一つのブランドのために観客をないがしろにする。そのブランドが自分のソーシャルメディアの投稿やキャンペーンに百万ドルを払ってくれるとしたら、考えてみてよ。連中はその百万ドルのためにこっちの観客全員に手を出した後だし、連中が欲しいものを確実に手に入れた後だ。こっちから必要なものをすべて搾取した後なんだよ。連中に搾取されるものを自分のために活用できたら、その先もっと大きな成功を得られる可能性があるのさ」と持論を展開した。

マシュメロのミュージック・ビデオですら、感情やストーリーに焦点を当てて人々の共感を得るように作られている。最も閲覧回数の多いYouTubeビデオは「Alone」だ。これはマシュメロ自身が子どもの頃に体験したいじめを題材にしており、25億回再生されている。この曲は一度もラジオで流されたことがないにもかかわらずに、だ。



Translated by Miki Nakayama

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