ミュージシャンも無関係ではない 自分の感情を商品化することの危険性

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社会学者のA.R.ホックシールドは、「肉体労働」と「頭脳労働」に加えて「感情労働」という概念を提示しました。これは顧客を不快にさせないように自分の感情を押し殺したり、反対に笑顔や賞賛する態度などを強調して表現したりするようなコントロールが必要となる労働のことです。典型的な職業としては、客室乗務員(CA)や看護士、介護士などがあげられます。ミュージシャンや芸能人などもこの「感情労働」に属すると言えるかもしれません。これら以外の職業でも、接客業や教育などの第三次産業は感情労働の割合が大きく、また、現代ではそうした職業に従事する人が増えていることもあり、多くの人にとって無関係ではなくなっています。そして、この感情労働を人は「表層演技」と「深層演技」の2種類の演技によって乗り切ろうとします。

「表層演技」とは「口角を上げる」「頭を下げる」など、身振りや外見などで感情表現を管理する、形式的・表面的な演技です。一方で「深層演技」は、俳優で例えるならば役に入り込んで「そう思い込むように感情をコントロールする」「なり切る」というような演技です。これは日常生活でも、「正しい(とされる)感情」を持つために行なわれることがあります。たとえば親友が重病を患ったという話を聴いた時、他の人がとても悲嘆にくれているのを見て、「自分の悲しみは足りないのではないか」と考え、より「正しく」深い悲しみを感じるように感情をコントロールするために、その親友との様々な記憶を思い出そうとするというようなケースです。

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