英国人エグゼクティブが音楽業界を牛耳っている理由とは? イギリスとアメリカの関係

英グラストンベリーフェスティバルのピラミッドステージで熱狂するオーディエンス(Photo by Anthony Harvey/Shutterstock)

イギリスにおける音楽の消費傾向は、ストリーミングや過去作、そしてジャンルにおいて、英国の音楽業界の動向が最大のライバルであるアメリカとは異なることを示している。

世界の音楽業界は現在、英国人エグゼクティブが牛耳っている状況だ。Universal Music Groupのトップを務めるSir Lucian Grainge、Sony Music Groupを仕切るRob Stringerはどちらも英国人であり、Warner Music Groupのglobal head of recorded musicを務めるMax Lousadaも然りだ。さらに、KobaltのグローバルA&R担当のSas Metcalfe、Warner ChappellのCEOであるGuy Mootもイギリス出身だ。他にもSteve Barnett (Capitol Music GroupのCEO兼チェアマン)、Peter Edge (RCAのCEO)、Darcus Beese(Island Records社長)、Merck Mercuriadis(Hipgnosis Songs FundのCEO)等、音楽業界におけるイギリス人の要人の名前を挙げればきりがない。

先日、また新たな英国人エグゼクティブが誕生した。急成長を続けるDowntownの出版部門のグローバルプレジデントとして、過去にWarner Chappellのトップを務めたMike Smithが指名された。音楽出版管理プラットフォームのSongtrustの親会社であるDowntownは出版会社として知られるが、昨年CD Babyの親会社であるAVLを約2億ドルで買収し、今年上旬にはアーティスト/レーベルの管理プラットフォームFUGAを4000万ドルで買収するなど、録音物の分野でも存在感を増しつつある。

音楽業界におけるグローバル企業のトップに、英国人エグゼクティブがこぞって指名される理由は何か? その問いに答えることは容易ではないが(その他の重要なトピックが注目されている現在は特に)、イギリスのメインストリーム系ラジオ局が象徴しているように、カテゴリーに固執しない英国の音楽業界の特性が一因だとする声もある。より説得力のある見解としては、ビートルズやストーンズ、クイーン、レッド・ツェッペリン、コールドプレイ、スパイス・ガールズ、より最近ではエド・シーラン、アデル、サム・スミス等、国の大きさと比例しないほど数多くの世界的スターを輩出してきた、長年に及ぶ英国の音楽業界の実績が挙げられる。

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しかし、USのヒップホップアーティストたちがアメリカのストリーミングチャートを席巻しているここ数年は、イギリスのスターたちが米国で台頭する機会はやや減少している。英国の音楽団体BPIが毎年発表しているマーケットレビューAll About the Musicは、それが事実であることを裏付けている。その最新のレポートによると、去年のアメリカ国内におけるオンデマンドストリーム(映像および音声)の上位3000アーティストのうち、イギリスのアーティストは全体の7.9パーセントにとどまっている。世界全体ではその数字は11.1パーセントまで上昇するものの、同枠組みにおけるアメリカのアーティストが占める割合は、実に51.9パーセントに及んでいる。

Translated by Masaaki Yoshida

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