『レッド・ツェッペリンIV』ロック史に燦然と輝く大名盤の誕生秘話

「悲惨な邸宅」での制作、音楽的インスピレーション

制作のほとんどは1970年末〜71年初頭の冬の時期に、ヘッドリィ・グランジで制作された。老朽化してジメジメしているうえに、暖房設備も不十分。ジョン・ポール・ジョーンズはこの邸宅を「悲惨」だと言い放った。ツェッペリンのレコードを念入りにプロデュースし、「自分がレッド・ツェッペリンのサウンドを司っている」と断言したというペイジは、この邸宅もプロダクションの一部として活用した。ボーナムのドラムセットを石段の吹き抜けに設置し、マイクを高く吊るすことで、彼はこの邸宅がもつナチュラルな音響を利用し、「レヴィー・ブレイクス」冒頭の強烈なバスドラムのキックとスネアサウンドを作りあげた。


ヘッドリィ・グランジを滞在中のツェッペリン

「ブラック・ドッグ」はヘッドリィ・グランジの周辺をうろついていた野良犬にちなんで名付けられた曲で、ジョーンズがマディ・ウォーターズのサイケデリックなアルバム『Electric Mud』(1968年)を聴いたあとに作ったリフが元になっている。曲のペースが速く、フラフラしていて落ち着かず、ペイジとボーナムが同期から外れようとしているようにも聴こえる。さらに音楽が途切れると、ロバート・プラントは“のたうち回ってばかりいる女”への渇望を叫びだす。彼は「あからさまにお風呂でやっちまおうぜというタイプ」の曲だと語っている(プラントのボーカルと三人の演奏が交互に掛け合う曲の構造は、初期フリートウッド・マックのブルース・ヒット「Oh, Well」にヒントを得たもの。これもまた、ツェッペリンがいかに幅広い音楽に精通し、それらを借用してきたかを示す例と言える)。

同じように、「ロックン・ロール」と(エレクトリック・ピアノにジョーンズの多才ぶりが窺える)「ミスティ・マウンテン・ホップ」は、今でもロック系の放送局でヘヴィ・ローテーションされているアップテンポなロック・ナンバーだ。プラントが後に「気狂いヒッピー」と呼んだ後者は、誰もが"髪に花をつけている"公園でドラッグを勧められるというお茶目な物語。水瓶座の時代を思わせる牧歌的なイメージは、ペイジ/プラントが抱くジョニ・ミッチェルと西海岸への深い愛情にインスパイアされた、哀愁ただようアコースティック・ナンバー「カリフォルニア」でも繰り返される。これはもう一つのトラベローグで、プラントは「薄情な女」を置き去りにして、「瞳のなかに愛のある」少女を探す旅を歌っている。

Translated by Rolling Stone Japan

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