追悼エンニオ・モリコーネ 映画史に残る傑作音楽を手掛けた「マエストロ」の功績

2001年、イギリスの演奏会で指揮をするエンニオ・モリコーネ(Photo by Robin Little/Redferns/Getty Images)


網羅するのは困難、モリコーネは映画そのものだった

モリコーネはレオーネ作品とマカロニウェスタン以外にも、多岐にわたる素晴らしい楽曲を作曲した。あまりにも多種多様で膨大なので、モリコーネファンがお気に入りリストを作っても、どれひとつとして同じものはないだろう。いわゆるグレイテスト・ヒッツの筆頭に挙がるのは、おそらくレオーネ作品や『ミッション』、『ニュー・シネマ・パラダイス』のサントラだろう。映画のキスシーンを集めたモンタージュ映像とともに木管と弦楽器の音楽が流れる『ニュー・シネマ・パラダイス』のクライマックスシーンでは、涙腺が緩みっぱなしだ。他にも、比較的無名な作品もヒット作に劣らぬ秀作がそろっている。『黄金の眼』のトリップ感あふれる60年代ファンク。『アルジェの戦い』の反乱のドラムとわめき声、繊細なハープシコード。部族の叫びを幾重にも重ねた『さすらいのガンマン』のサントラは、『キル・ビル』や『ハイスクール白書 優等生ギャルに気を付けろ!』でも耳にしたことがあるだろう。モリコーネがいなかったら忘れ去られていたであろう『暗殺の詩/知りすぎた男どもは、抹殺せよ』は、テルミンのような女性ボーカリストのトレモロとピアノのコンビネーションが耳について離れない。実際のところモリコーネは驚異のスピードで作曲したため、よっぽど熱烈なファンでない限り、すべてを網羅することは不可能だ。



『続・夕陽のガンマン』メインテーマを援用・サンプリング・カバーした曲を集めたプレイリスト

モリコーネのレガシーは映画音楽の垣根を超え、ジェイ・Zやメタリカ、レディオヘッド、ラモーンズ、ミューズ、ナールズ・バークレイ、その他大勢のポップスターたちが彼の音楽をサンプリングしたり、彼の音楽から影響を受けたり、あるいはその両方を経験している。彼はまた、リスナーにサントラアルバムを買いたいと思わせることのできる稀有な作曲家だった。歴代レコードセールスは7000万枚を超える。生涯現役を貫き、引退などどこ吹く風だった。アカデミー賞の功労賞はたいていお払い箱にされたアーティストに与えられるものだが、モリオコーネは受賞を新たなバネにして、約10年後には87歳にしてオスカー像を手にしている。

エンニオ・モリコーネは映画のサウンドだった。いや、映画そのものだった。モリコーネのサントラをかけ、目を閉じて、ジャンルのパラダイスへと旅立とう。銃撃戦のアクションからフェロモンたっぷりのエロティシズム、はっと息をのむような美しさ。マエストロの瞳が再び開くことはないかもしれないが、傑作をまとめたモンタージュ映像は永遠に流れ続ける。

Translated by Akiko Kato

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