追悼エンニオ・モリコーネ 映画史に残る傑作音楽を手掛けた「マエストロ」の功績

2001年、イギリスの演奏会で指揮をするエンニオ・モリコーネ(Photo by Robin Little/Redferns/Getty Images)


マカロニウェスタンに与えた決定的影響

60年代初期、モリコーネは映画音楽の作曲に方向転換する。はじめは軽いタッチのコメディを手掛けていたが、1964年、彼のキャリアを決定づける2つの出来事が起きた。ひとつめは、即興とアバンギャルドなテクニックを積極的に作品に盛り込んだクラシックの作曲家集団、グルッポ・ディ・インプロヴィザツィオーネ・ヌオーヴァ・コンソナンザ(通称イル・グルッポ)に加わったこと。もうひとつはレオーネ監督に起用され、マカロニウェスタン・ムービー『荒野の用心棒』のスコアを書いたことだ。バーナード・ハーマンとアルフレッド・ヒッチコック、ジョン・ウィリアムズとスティーヴン・スピルバーグと並ぶ、作曲家&映画監督のコンビの先駆けだ。この時から、モリコーネ音楽の要素がすべて存在していた。シンプルで記憶に残るメロディ――この場合は穏やかなアコースティックのリズムに、強い口笛が重なる――そして銃声、馬の蹄の音、教会の鐘、そしてひときわ激しいギターの調べといった、予想外のサウンドが彩を加える。



レオーネ監督との共同作業で、モリコーネの音楽はウェスタンというジャンルを大きく変えた。彼の音楽は西部劇ではおなじみのだだっ広い荒野に、型破りで場違いともいえる荘厳さを与え、レオーネ監督が意図したアクションと詩的な緩慢さを際立たせた。1966年の『続・夕陽のガンマン』のメインテーマを支えていた遠吠え、ヨーデル、口笛、鞭を鳴らす音は、皆さんも覚えているだろう。おそらく彼が手がけた中でもっとも有名な作品だが、モリコーネという縁の下の力持ちがいなかったら、映画の重要なシーンも滑稽なほど冗漫になっていただろう。ピアノと管楽器が見事に融合し、ストリングとドラムと女性ソリストを壮大なクライマックスへと誘う「ゴールドの恍惚感」は、イーライ・ウォラックが墓場を駆け回るシーンのバックに流れている。「対決する3人~続・夕陽のガンマン」は、映画の山場となる決闘のシーンで流れる曲だが、炸裂するトランペットがじりじり展開する場面に壮大な雰囲気を与えている。




『ヘイトフル・エイト』のサントラがゴールデングローブ賞を受賞した際、モリコーネの代理で賞を受け取ったタランティーノ監督は(この作品以前にも『キル・ビル』や『イングロリアス・バスターズ』でマエストロの音楽をサンプリングしている)彼をベートーヴェンやモーツァルト、シューベルトになぞらえたが、映画音楽という「ゲットー」以外でも評価されるべきだと言った。だがモリコーネ音楽の特徴のひとつは、映画という織物の表面を飾り立てるだけでなく、繊維にしっかり織り込まれていることだ。彼は音響効果も楽器として扱い、それぞれのキャラクターに特定のフレーズを紐づける。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』では、チャールズ・ブロンソン演じる(アンチ)ヒーローに寂しげなハーモニカを結びつけた。『ミッション』では、ジェレミー・アイアンズ演じるイエスズ会の聖職者が劇中に奏でるオーボエを盛り込んで、繊細な曲を作った。

Translated by Akiko Kato

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