追悼エンニオ・モリコーネ 映画史に残る傑作音楽を手掛けた「マエストロ」の功績

2001年、イギリスの演奏会で指揮をするエンニオ・モリコーネ(Photo by Robin Little/Redferns/Getty Images)

エンニオ・モリコーネが7月6日に91歳で亡くなった。西部劇の音楽の在り方を変え、映画史に残る傑作音楽をいくつも手掛けた巨匠の功績を振り返る。

500作以上もの映画とTV番組の音楽を手掛け、100曲を超えるクラシック作品を残した作曲家、エンニオ・モリコーネ(享年91歳)。寝る間も惜しんで作曲、編曲、演奏旅行を行いながら、レパートリーに磨きをかけては幅を広げ、様々なビジョンや移り変わりの激しい流行に柔軟に対応した。雑食でありつつも――いや、雑食だからこそ――多くの人々から「マエストロ」と呼ばれた彼の音楽は、最初の数小節を聞いただけで間違いなくモリコーネ作品だとわかる。彼の名前はマカロニウェスタン、とりわけセルジオ・レオーネ監督と組んだ『続・夕陽のガンマン』『ドル箱三部作』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』といった作品の代名詞となったが、他の偉大な映画監督にも手を貸した。ベルナルド・ベルトルッチ、ダリオ・アルジェント、ドン・シーゲル、ブライアン・デ・パルマ、ジョン・カーペンター。クエンティン・タランティーノの西部劇『ヘイトフル・エイト』では、アカデミー賞最優秀オリジナル作曲賞で初のオスカー像を手にした。

モリコーネは1928年、ローマ生まれ。生涯一度もイタリアを離れたことはなく、ハリウッドからの誘いを頑なに拒んだため、英語を流暢に話すことはなかった(2007年、アカデミー賞功労賞を受賞した時のスピーチは、レオーネ監督の秘蔵っ子クリント・イーストウッドが通訳を務めた)。初めて作曲したのは6歳のとき。12歳の時に名門音楽院のサンタ・チェチーリア国立アカデミーに入学したときから神がかり的な才能を発揮し、通常は4年間かけて学ぶトランペット和声学を6カ月で修了した。駆け出しのころはオーケストラの曲を書いたりジャズバンドで演奏したりしていたが、並々ならぬ順応性が認められ、RCAの一流スタジオアレンジャーとして人気アーティストの曲を作曲した。のちにペット・ショップ・ポーイズやk.d.ラング、アンドレア・ボッチェリ、スティング、その他大勢のアーティストの曲を書いたことはあまり知られていない。彼の作風の幅広さがお分かりいただけるだろう。

Translated by Akiko Kato

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