不条理な世界と闘った、音楽史に残る「反逆のアイコン」15選

13. ザ・クラッシュ


音楽に政治を持ち込んだ、永遠の社会派バンド

「人間について、神について、法について考えてないんだとしたら」ザ・クラッシュのジョー・ストラマーはかつてこう語った。「君はなにも考えていないということだ」彼らにインスピレーションを与えたのはセックス・ピストルズで、ピストルズの初期のギグがきっかけとなってストラマーとギタリストのミック・ジョーンズはバンドを組んだ。しかしピストルズと違ってザ・クラッシュはニヒリズムを無視し、そのかわりに政治的アクティヴィズムを選び取った。彼らのデビューシングル「白い暴動」は、時折人種間戦争への呼びかけだと誤解されることがある。しかし実際には、ストラマーは黒人のアクティヴィストたちの姿に刺激を受け、イギリスの若者に対して支配者階級に対して立ち上がるよう呼びかけたのだ。アーティストとしてのブレイクスルーを経るごとに、バンドの視座はグローバルに広がっていった。たとえば「ロンドン・コーリング」(「スペインの爆弾」という歌詞がある)もそうだし、とりわけ1980年の3枚組『サンディニスタ!』はニカラグアの革命家たちから名付けたアルバムだ。「君は大人になって、落ち着いて、いまや弾圧に手を貸している」とバンドは歌い、リスナーに対して若き日の理想主義を失わないよう懇願した。ストラマーは2002年に50歳の若さで亡くなるまでそのスタンスを貫いた。

●ザ・クラッシュが人種差別と闘った、1978年の「白い暴動」を振り返る




14. セックス・ピストルズ


騙された気分はどうだい?

2006年、唯一のスタジオ・アルバム『勝手にしやがれ』の超人的な力強さが評価されロックンロールの殿堂入りを果たしたとき、このイギリス人たちは式典への出席を鼻であしらった。「式典には行かない」バンドは脅迫状のような声明でこう書いた。「お前らの猿じゃあないんだ」セックス・ピストルズが自分たちの育ったヒッピー的なカウンターカルチャーを拒絶し、パンクな世界を形づくるのを助けたのは確かだが、しかし彼らは間違いなく「反エスタブリッシュメント」であり、その点では先行するカウンターカルチャーと同様だった。「おれはアンチ・クライスト/おれはアナーキスト」ジョニー・ロットンは周知の通り、こう宣言して「アナーキー・イン・ザ・U.K.」を歌い始めた。「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」では、イギリスで最も批判を許されない女王を「人間じゃない」と退けた。さらにもう一丁、彼はかつて、「大嫌い」と書き殴られたピンク・フロイドのTシャツを着ているのを目撃されたことがある。サンフランシスコでのステージ(下掲の動画)で唐突に活動が終わったとき、ロットンは加入してまだ3年しか経っていなかったが、こんないやらしい質問を残して去っていった。「騙された気分はどうだい?」

●セックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズが語る「俺たちは破滅する運命だった」




15. ジョニー・キャッシュ


ドロップアウトした人間に寄り添い、支配層に中指を立てたカリスマ

ママは拳銃で遊ばないように教わったはずなのに、彼はリノの男を撃ち、「男が死にゆくのを眺めていた」。彼の最初のバンドは、ドイツで空軍に従軍していたころに組んだもので、ザ・バーバリアンズと呼ばれていた。ほかのどんなカントリー・アーティストをもさしおいて、ジョニー・キャッシュはアウトローの苦境を最もよく理解していた。彼がフォルソムとサン・クエンティンで行った刑務所コンサートは、囚人たちの誰もがモンスターというわけではなく、むしろ彼らは間違った決断を下してしまっただけなのだ、という彼の考えを強固にする助けとなった。悪名高い「ミドルフィンガー」の写真は、サン・クエンティンにてロック・フォトグラファー(かつ反逆者としての同志でもあった)ジム・マーシャルによって撮影された。刑務所長に贈る写真のためにポーズをとるよう頼まれた際のものだ。数年後、キャッシュがプロデューサーのリック・ルービンの後押しでキャリア再興のさなかにあったとき、彼らはビルボード誌に広告を出した。例の写真に、いかにも短気なこんなキャプションを添えたものだ。いわく、「ナッシュヴィルの音楽業界エスタブリッシュメントとカントリーラジオ局の皆様のご支援に感謝します」。

●音楽史上最高のライヴ・アルバム ベスト50

Translated by imdkm

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