ペンス米副大統領が「Black Lives Matter」を決して口にしない理由

ペンス副大統領がキング牧師の名を出したのはこれが初めて

ペンス副大統領はこの話題について事前に答えを準備していたようだ。1週間ほど前の6月19日、フィラデルフィアのTV局とのインタビューでペンス大統領はこの質問に言葉を詰まらせていた。黒人の命は大事だと口にするのを拒みつつ、「すべての命が大事」という決まり文句を繰り返したが、マーティン・ルーサー・キング・Jr牧師のことには一言も触れなかった。だが今回のインタビューでは、よどみなく言及していた。

しかし、実際のところキング牧師は過激な左派だった。そうではないと言うペンス副大統領は間違っている。キング牧師の大ファンだというペンス副大統領は、「I Have a Dream(私には夢がある)」というキング牧師の演説も失念していたに違いない。1963年のワシントン大行進の際、牧師はアメリカの黒人が「警察の暴力行為という筆舌に絶する恐怖の被害者」である限り、「私は決して満足することはない」と発言した。ワッツ暴動(1965年、黒人の不法逮捕をきっかけにロサンゼルスで発生した事件)の後、公民権運動の指導者はこのように書いている。「南部での警察の暴力行為に対し、黒人も白人も、国全体が怒りに震える中、北部の警察の不正は正当化され、見過ごされ、常に否定されていたのです」。また牧師は「人種差別、過剰な物質主義、軍事主義という三大悪」への戦いも呼びかけていた。武装した警察が装甲車を盾にして、平和的な抗議デモ参加者に催涙弾やゴム弾を発射する様を全米が見守る中、警察が軍隊化していることは疑いようもない。

事実、マーティン・ルーサー・キング・Jr牧師なら間違いなく「黒人の命は大事だ」と口にしたはずだ。自称牧師の信奉者であるペンス副大統領も、問題なく口にできるはずだろう。だが代わりに副大統領は、大勢の保守派と同じことをした――キング牧師の発言や非暴力のメッセージを捻じ曲げ、キング牧師が命を懸けて勝ち取ろうとしたのと同じ戦いを繰り広げる者たちを糾弾しているのだ。

全米有色人種向上協会(NAACP)法的支援基金(LDF)のシェリリン・イフィル会長は副大統領の後に番組に出演し、他の政治家と同じく副大統領の言葉にも重みがなく「行動で示すべきだ」と述べた。

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Translated by Akiko Kato

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