スプラッシュ・マウンテンの題材変更、問題視された幻の映画とは?

米フロリダ州レイク・ブエナ・ビスタ、ウォルト・ディズニー・ワールドのマジックキングダムにあるスプラッシュ・マウンテンの入り口付近に展示されている、映画『南部の唄』のキャラクター、ブレア・ラビット(Photo by John Raoux/AP/Shutterstock)

先日発表された米ディズニー社の人気アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」の題材変更。1989年の誕生以来、ディズニーの遊園地では定番の乗り物だったが、カリフォルニア州のディズニーランドとフロリダ州のマジックキングダムの同アトラクションはいずれも模様替えされ、ディズニー初の黒人プリンセスを扱った2009年のアニメ映画『プリンセスと魔法のキス』のキャラクターが新たに登場する。

スプラッシュ・マウンテンの世界観のベースになっているのは、1946年のディズニー映画『南部の唄』。南部の白人作家ジョエル・チャンドラー・ハリスが、19世紀に黒人アメリカ人から聞いたとする「リーマスおじさん」シリーズが元になっている(ただし、真偽については議論が続いている)。同作品に批判的な人々が言う「南部再建時代を美化した」ところがあり、作品中の黒人描写に関して長年議論になっていた。

【動画】アメリカでは1986年以降、ディズニー側の自主規制により一度も再公開されていない『南部の唄』の予告編

カリーナ・ロングワース氏のポットキャスト『You Must Remember This』によると、『南部の唄』には公開直後から、全米有色人種向上協会などの団体から非難の声が挙がっていたという。ちなみにこのポッドキャストは、まるまる1シーズン割いて映画とスプラッシュ・マウンテンの歴史を紐解いている。「誰が物語を語り、誰が利益を得るべきか。どのように語るのが正しいのか。今持ち上がっている議論と同じことが、1946年にも起きていました」と、昨秋ロングワース氏はローリングストーン誌に語った。

こうした批判にもかかわらず、ディズニーは1956年から1986年の間に4回もこの映画を劇場で再上映している。ディズニーはこの作品を公式には撤回していないが、これまで一度もホームビデオ化されていなかったため、ファンの間では「禁断の映画」として誤って認識されていた。ストリーミングサービス「ディズニー+(プラス)」でも配信されていない。CEOのボブ・イーガー氏は株主総会で、この作品は「現代社会にはそぐわない」と発言している。

『南部の唄』が映画史に重要な役割を果たしているとして、一部のディズニーファンからはDVD化を求める声も上がっているが、近年ディズニーファンの間では、1989年に誕生したスプラッシュ・マウンテンのテーマ替えを訴える活動が勢いを増していた。「スプラッシュ・マウンテンを『プリンセスと魔法のキス』に模様替えしよう」というChange.orgの嘆願書には、2万人以上の署名が寄せられている。

ディズニー・パークのブログに投稿された報道声明の中で、ディズニー社はアトラクションとその原案をめぐる論議に遠回しに言及した。「スプラッシュ・マウンテンのテーマ変更は、昨今とくに重要な課題です」と、ブログの投稿には書かれている。「次のコンセプトはインクルーシヴです――全てのゲストが共感し、感動できるようなもの、そして毎年パークを訪れる数百万人の多様性を反映したものになります」

【画像】米ポルノ業界、人種差別の赤裸々な実態(写真)

Translated by Akiko Kato

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