キング・クリムゾン「21世紀のスキッツォイド・マン」当事者たちが明かす50年目の真実

キング・クリムゾン(Photo by DGM Archives)

キング・クリムゾンによる1969年の大名曲「21世紀のスキッツォイド・マン」は、いかにロックの作曲水準を上げ、ひとつの音楽ムーブメントをつくりだす要因となったのか。バンドのオリジナルメンバーたちが制作現場を回想。彼らと同時代を過ごしたプログレッシブ・ロックのミュージシャンたちも、この曲の凄まじいインパクトを振り返ってくれた。

1969年の春、ある夜更けのこと。ライブのための遠征から戻ってきた若きロンドンのバンド、イエスのメンバーは、寝る前に一杯ひっかけるためにスピークイージーというクラブに立ち寄った。

「狭くてボロいところだった」と語るのはビル・ブルーフォード。当時はイエスのドラマーだった。「ロックグループはショーを終えた深夜1時ごろになると、よくそこに遅い晩酌とステーキ・サンドウィッチを食べにいったものだ。私たちはその日の仕事先から100マイルほど運転して戻ってきて、まさにそうするところだった」

イエスのメンバーたちが店に入ると、ある地元のバンドがステージでセッティングをしていた。

「入っていくとちょうどキング・クリムゾンが演奏を始めるところで、非常にうやうやしく、また静謐だった」ブルーフォードは語る。「その後、この神々しく全能の、力強い獣が自らを解き放った。誰かがそれまでに聴いたなにものともまったく似ていなかった。誰もこれがいったいなんなのかすらわかっていなかった。歌詞も異様、ミュージシャンたちが演奏に徹する姿も異様、サウンドも異様で、ストロボが焚かれて強烈な激しいエッジをつくりだしていた――なんというか、みんなを凍りつかせていた」

「その夜以来……」と彼は付け加える。「イエスをやめてキング・クリムゾンに入りたいとしか考えられなくなった」

●プログレ史上最高のドラマー、ビル・ブルーフォードが語るイエス、クリムゾンと音楽家人生

ほんの3年後、ブルーフォードはこの夢を実現することになる。キング・クリムゾンに加入し、四半世紀にわたって断続的な活動に参加したのだ。しかし彼が加入するまでの間に、彼がスピークイージーで目撃した「神々しく全能の力強い獣」は世界的な名声を獲得することになる。その夜、彼を含めたその場の全員を釘付けにした曲は、英国とアメリカのファンには奇妙で印象的なタイトルで知られるようになる。「21世紀のスキッツォイド・マン」だ。

Translated by imdkm

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE