キース・リチャーズが語るアメリカと人種差別、ツェッペリン、ロックンロールの未来

キース・リチャーズ(Photo by Theo Wenner)

初めての裁判所で学んだこと、レッド・ツェッペリンやザ・フーへの本音、チャーリーやミックとの深い絆、お気に入りのストーンズのアルバムなど。米ローリングストーン誌に掲載された2015年10月のカバーストーリーから、キース・リチャーズの貴重な発言をお届けする。

「スタジオが大好きだ。誰も居なくてもね」ニューヨーク中心部にあるスタジオで、キース・リチャーズはソファに座り、紫煙の向こう側からそう語った。キースはしばらく黙っている。かすかな電子音が聞える。「ブーンという音がほんの少し聞こえるが、この静寂がキャンバスだ。俺はスタジオの中を見渡してこう思う。『可能性だらけだ! いい曲があり、腕のいいドラマーもいる』」

リチャーズは、スタジオがレコーディングに与える影響力をよく知っている。彼が5日間徹夜で「ビフォー・ゼイ・メイク・ミー・ラン」を収録したのも、ギターの音をいくつも重ねて、「ギミー・シェルター」の催眠的なイントロを制作したのも、全てスタジオという空間だ。まだ暖かい9月のある日の午後、リチャーズは緊張感に包まれていた。脚を揺らし、質問に耳を傾けながら黒い瞳を一点に集中させ、そのあいだにマルボロの赤を吸った。口にする飲み物は、2オンスのウォッカにオレンジソーダと氷をたっぷり入れた「Nuclear Waste(核廃棄物)」。リチャーズのアシスタントが、段ボールに入ったアブソルート・ウォッカのミニボトルから一晩中作る。

【写真ギャラリー】キース・リチャーズの音楽人生を振り返る

リチャーズはナイキのテニスシューズを履き、「Do Not X―Ray(レントゲンお断り)」と書かれたTシャツの上に蛇革のジャケットを羽織っている。スタジオの照明がスポットライトのようにリチャーズの頭を照らす。リチャーズは笑うことに貪欲で、かなりの曲者でもある。インタビューの途中で、私は1989年の『スティール・ホイールズ』制作時の話を振ってみた。曲の変更を提案したレコード会社の重役に、リチャーズがナイフを投げつけたという逸話だ。リチャーズはこう答えた。「俺の狙いはかなり正確だ。“ちょうど”当たらなかったのさ」

この取材は、リチャーズの見事なソロ最新作『クロスアイド・ハート』を巡るローリングストーン誌のカバーストーリー用に行われ、(NYの)ジェルマーノ・スタジオと、コネチカット州にあるリチャーズお気に入りのレストランで行われた。ここでは、彼のレコーディング・プロセス、アメリカで活動し始めた頃の話、バンドの未来、60年代から活動する同期についてなどを抜粋している。インタビューを受けることについて、リチャーズはこう言った。「そうだな、警察の取り調べよりはマシだ!」

Translated by Rolling Stone Japan

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