キース・リチャーズが語るアメリカと人種差別、ツェッペリン、ロックンロールの未来

1967年、初めての裁判所で学んだこと

―警察といえば、1967年にミックや他の仲間とイギリスの自宅で逮捕されましたね。あなたは敷地内でマリファナを吸わせた罪で訴えられ、裁判官に面と向かってこう言っています。「俺たちは年寄りじゃない。お前らのくだらないモラルなんかどうでもいい」

キース:ただ咄嗟に、口をついて出てきただけだ! 裁判官はいかにも堕落した人間を見るような目つきで、俺もアイツのことをジッと見てやった。たまたま知ったことだが、その裁判官は、魚肉ペーストの製造業を営む名家の出身だった。裁判所は初めてで、シュールな劇場にでもいるような気分だったよ。

奴らはマリアンヌ・フェイスフルの話を持ち出し、彼女がラグしか身に付けていなかったとか言いだした。そんなの放っておいてくれよな(笑)。「彼女は毛皮のラグしか着てなかった」なんて言うけど、毛皮のコートだろうが、テントをまるごと一張着ようが勝手だろう! それで、「くだらないモラルなんかどうでもいい」って思わず言ってしまったんだ。そんなことを言っても自分の得にならないのはわかっているが、同時にこんな考えが頭をよぎった。「俺はここで媚びへつらって、『申し訳ございません、裁判官……』云々とか言うのか?」

俺は悪いことをしたとは思っていなかったから、ただ自分の考えを言うことにした。それで、「くだらないモラルなんかどうでもいい」って言ったのさ。

【写真】裁判所でのミック・ジャガーとキース・リチャーズ

―人々は、その発言を大いに歓迎しました。「自分のルールでやっていけるかもしれない」と思うようになったのはその頃からですか?

キース:ある意味、そうかもしれない。その瞬間から自分やストーンズだけの問題ではなく、支配層との戦いだと思うようになった。俺たちはそういう世代なんだ。だから裁判所ではっきり意思表示することにした。そうやって発言したことで、自分の背後には陪審員より大きな存在がいることに気付いた。陪審員の考えを揺さぶることができても、裁判所の外には(大衆という)もっと巨大な陪審員がいる。彼らの目があるから、俺たちに言い掛かりをつけづらくなるんだ。でっち上げの裁判ならなおさらね。

判決は懲役1年だったが、最終的には覆った。俺は違法行為をするために出向いたわけではないし、法を破ることに興味はない。ただステージに立って、自分の音楽をやりたかっただけだ。それを理由もなくいきなり妨害された。争点は法律でも何でもない。くだらないモラルだったんだ。「OK、これは戦いだ。決着をつけてやる。有利なのは完全にアイツらだ。俺にはこのちっぽけな口しかない」ってね。自分でも「黙ってくれないか」って思うこともある!(笑)。でも同時に、支配層の弱さや被害妄想も見えてきた。奴らは一介のギタリストやロックバンドを標的にして、ストーンズが悪の象徴であるかのように仕立て上げ、どんなに間違っているのか証明しようとしていた。俺たちは八方塞がりにされて、しらばっくれるしかなくなっていた。わかるだろ?

Translated by Rolling Stone Japan

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