サザンオールスターズが50万人を魅了、無観客配信ライブで見せたバンドとエンタメの底力

サザンオールスターズの桑田佳祐(Photo by 岸田哲平)


「天井桟敷の怪人」からはダンサーも登場。さらに、ステージにシャンデリアが現れ、スクリーンに映し出される映像の前で女性ダンサーがタンゴを舞う。続く「愛と欲望の日々」ではダンサーの数が一気に増え、ステージ前方では炎が揺らめく。演出にもまったく抜かりがないどころから、曲を重ねるごとにド派手になっていく。

映像面では無観客ならではの工夫が見られた。通常のライブでは配置されないような位置にカメラがあるのだ。まず、センター席最前列に鎮座する大型クレーン。こんなカメラ配置は通常のライブで見ることはまずない。あったとしたらクレームの嵐だ。だが今回は無観客。このカメラのおかげでどのアーティストのライブ映像でもお目にかかることのないカメラワークを楽しむことができた。特に、引き画から桑田の正面にグッと迫っていく流れはライブ映像としては非常に新鮮だ。もうひとつは頭上に吊るされ、縦横無尽に動き回っていたフライングカム。普段は観客の安全面を考慮して、この会場で使われることはないそうだが、今回はこのカメラが大活躍。客席からステージ上へとすごいスピードで画が動いていく様子はちょっとしたアトラクションだ。


Photo by 岸田哲平


Photo by 岸田哲平

「真夏の果実」では、センター席も含めた全座席に2つずつ設置された、遠隔操作によって光を自在にコントロールするリストバンド型ライトが光ったり、「東京VICTORY」では火がともされた聖火台がセンター席のど真ん中に現れるという驚きの演出も。「エロティカ・セブン EROTICA SEVEN」ではリストバンド型ライトが再びド派手に場内を照らし、本編最後の「勝手にシンドバッド」では特効の銀テープとともにセンター席に現れた大量のダンサーがめちゃくちゃに踊りだし、さらにステージには防護服を来たカメラマンまで現れる始末。これには声を出して笑ってしまった。

こんなふうにして会場に観客がいないことを逆手に取ったアイデアの数々で、サザンはこの配信ライブをより特別なものにしたのだった。今回のライブの開催を聞いたとき、観客がいないのにアリーナのような大会場でやる必要があるのかと疑問に思っていた。横アリへの思い入れだけで強行するのは無茶なんじゃないかと。しかし、今回のライブはステージの上だけで行うものではなかった。会場全体を演出装置にしてしまったのだ。結果として、横浜アリーナという会場は彼らのスケール感を表現するにはうってつけの場所だったのである。


Photo by 岸田哲平

このライブに込められた想いは計り知れないものがあったのだろう。「ロックンロール・スーパーマン~Rock’n Roll Superman~」やアンコール終了後のエンディング映像で本公演の制作の模様を追った映像が映し出されていたことから、スタッフへの思いが相当強いことも十分に伝わった。しかし、サザンはこの120分強をそういった想いで完結させることはなく、これまでにお目にかかったことのない極上のエンターテイメントへと昇華させたのだ。日本ロック界の巨人は、42年前に「勝手にシンドバッド」でお茶の間を騒がせ、この2020年にも再びいい意味での「なんじゃこりゃ!?」の嵐を巻き起こしたのである。

ちなみに、本公演のチケット購入者は18万人、想定視聴者は50万人。通常では考えられないほど多くの人がこのエポックメイキングなライブを目撃した。さあ、ここからエンタメの逆襲が始まる。配信が終わり、PCを閉じ、レコード会社の会議室を出るとき、2時間前よりも少しだけ強くなったような気分の自分がいた。

●サザンオールスターズのプレイリスト企画〜Rolling Stone Japan編 テーマは「闘うサザン!!」


Photo by 岸田哲平

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